阪神矢野燿大監督(51)が1日、今季限りでの現役引退を表明した藤川球児投手(40)との思い出を語った。

-藤川が引退。最初に聞いたときの思いは

やっぱり複雑な、もちろん寂しいなっていう部分も最初にあって。球児自身いろいろ考え、悩み、また体とも相談した結果、そういうふうなね。いろいろな感情があります。

-話はされた

話はしました。球児自身もみなさんの前で話したように、今シーズン限りっていうのはありますけど、まだ残りがある分、精いっぱい戦うと言ってくれていますし、酷使した体を最後の最後までチームのためになんとかしようと、してくれるということは言ってくれている。チームとしてはいい形で応えられるように、と話をしている。

-藤川は昨年から考えていた、と。説得などは

その都度、話はしてますし、自分を振り返ってもね、40歳、しかも球児は抑えというすごく大変な体に負担のかかるところでやっているので。残してきた実績もすごい。代わりにというか、(過酷なだけに)逆にちょっと引退というのもどこか頭をよぎるのは自然なことだと思う。そのときに思ってることは球児にも伝えてきたつもりです。

-具体的に伝えたことは

どうですかね、ちょっと…。まあ、時間がたてばね。また、落ち着いてゆっくり話できる時間もありましたし、その時にたわいのない話もしていますしね。僕はバッテリーも一番組んできたキャッチャーだと思うので、そういう話もしました。球児が例えば辞めるということは、球児だけの問題じゃないようなレベルの選手なので、いろんな話をしましたね。

-今季の投球はどうように見ていた

コロナで調整も難しい中、その中でも全力を尽くしてやってくれている姿はいつも見ていましたし。でもその中で、自分のボールがどうなのかっていうところでの葛藤が常にありながらやっていたというか、そういうのも見ていましたし。球児自身苦しい思いをしながら、それでも「何とか、何とか」という日々を重ねていたんじゃないかなと思います。

-現役時代の思い出

いっぱいあります。79試合登板かな? (当時のシーズン最多)登板記録の時に、すごいフラッシュで甲子園が。「球児すごいな」とマウンドで「すごいフラッシュやな」と言いながら。試合中にもしゃべった記憶もありますし。オールスターとか、優勝のイメージがありますが、逆に2003年ですかね、今の巨人の後藤コーチに9回3点差で勝っているところで、東京ドームで2アウトまで行ったのかな、ホームラン打たれたんですけど。ある意味、あそこから球児の伝説というのがスタートしたのかなと。逆にやられたことなんですけど、その場面が印象に残っています。

-監督、選手の立場で印象に残っていることは

ご飯も球児とは一番行きましたし、いろんな話をしました。ちょうど球児とは(年齢が)ひと回り違うんですけど。プライベートな話もいっぱいしましたし、楽しくいろんな話ができたなという印象があります。

-どんな選手

球児の代わりはいない。僕もキャッチャーをやりながら、抑え方まで最後こだわったというか。球場に来てくれている、またはテレビで応援してくれているファンが『最後はストレートで三振を取ってくれ』という期待があるんで。もちろん、その中でフォークボールのサインを出したことはありますけど、基本的に最後は真っすぐって抑え方にもこだわって。その中で、生涯防御率も2点ぐらいじゃないですかね。ずっと1点台で来ていた。分かっていても打てないストレート、本当に魔球だと思っていました。あの時代で、ストレートを行くぞっていって、いいバッターがみんな打てないんですから。本当に近い将来伝説になるピッチャーを受けられて、ストレートを一番多く受けたというのは誇りです。

-最後のシーズンを一緒に戦う

球児が辞める時に監督っていうのは想像できなかったですけど、これも何かの縁ですし。球児がメジャーに行ってあまり思うようにいかず、独立リーグまで行って、またはい上がってきた。本当にすさまじいというか、すごい人生を歩んだピッチャー。やっぱり球児が最後出てきて、あの曲でファンに見てもらって、マウンドに立つっていうのをまた見たいですし。その場を僕らがしっかり作っていくというのはやりたいし。そこはイメージしています。

-1日から13連戦

そうですね。先を見ると、どうしても重たくなったりしてしまうので、目の前の1試合を全員で戦う積み重ねが日本一、優勝、また球児の舞台を整えるってことにもなると思う。1戦1戦全力で戦います。

-火の玉ストレートは最高だった

分かっていて打てないんだもん。変化球でもなかなかないんじゃないかな。ピッチャーなら誰しもが憧れるというか。そのストレートを投げていた。それを受けられるって言うことは幸せだったなと思う。

-藤川がチームに及ぼした影響

みんな印象で球児イコール、ストレート。速いボールで抑えていた。能力で抑えていた印象があると思うんやけど、実際はすごく大胆な中に、めちゃくちゃ繊細な部分があって。そのストレートを投げるっていう中でも、目いっぱい投げるというだけじゃなくて、身体の近い方に投げるとか、ベルトよりも絶対上に投げるとか。ここは絶対低めに投げるとか。1球1球、すごく自分の中で繊細に考えて投げるピッチャーだったから。そこらへんはただ単に、目いっぱい投げて三振取るというピッチャーではない。話せば、球児は『そうやってやってるんや』とか。また、対戦相手のバッターを見る視線とか、見方とかそういうものも球児はすごく鋭いんで。投げるだけじゃなくて、そういう部分は自チームにいいものを伝えていってくれたと思っています。

-若い選手にとってはこれからも貴重

もちろん、聞けるチャンスがね。もちろん辞めてからでも聞けると思うけど。自分から行って、球児が教えてくれないというのはないと思うし。球児もそういう姿勢で。米国から帰って来てから特に。ぶっ壊れてもチームのためにというのもあいつ自身がずっと言ってくれていた。そういう何か後輩に残せるものは何でも残したいというふうにやってくれると思う。それは下のやつから行きにくい部分もあるかもしれないけど、どんどん行けば教えてくれると思う。そういう時間にしてくれたらなと思います。

-リーグ制覇、日本一の舞台で彼が締める

もちろんね。球児がハラハラドキドキするような場面を俺らが作って、球児自身が投げるというのが似合っているし、ふさわしい。本当にボロボロの中、何とか球児自身もそこまではい上がってきて欲しいし。俺らは俺らでそういう思いで戦っていくという、新たな決意になったかな。