阪神矢野燿大監督(51)が、今季限りで現役を引退する藤川を思い、逆転Vへ突き進む決意を新たにした。

現在巨人を追う位置にいるが、リーグ優勝、日本一を決めるマウンドに藤川がいることが理想。「球児がハラハラドキドキするような場面を俺らが作って、球児自身が投げるというのが似合っているし、ふさわしい場所を。本当にボロボロの中、何とか球児自身もそこまではい上がってきて欲しいし。俺らは俺らでそういう思いで戦っていくという、新たな決意になったかな」。藤川の復調を信じ、それを迎え入れるべく、最高の舞台を準備する。

現役時代、女房役として苦楽をともにした。ドラマも多く紡いできた。思い出は尽きない。火の玉ストレートについて「分かっていて打てないんだもん。それを受けられることは幸せだったなと思う」。その直球が特別だからこそ、捕手として、抑え方にもこだわったという。「球場に来てくれている、またテレビで応援してくれているファンが『最後はストレートで三振を取ってくれ』という期待がある。基本的に最後は真っすぐという抑え方にこだわって。分かっていても打てないストレート、本当に魔球だと思っていました」と、振り返った。

藤川のことを最も間近で見てきた。「やっぱり複雑な、寂しいなという部分も最初にあって。球児自身いろいろ考え、悩み、また体とも相談した結果…。いろいろな感情があります」。藤川はこれまで、幾度の困難も乗り越えてきた。今回も復調するに違いない右腕に応えるべく、2位に浮上したチームの先頭に立ち、巨人をとらえてみせる。この日の試合後にも「明日は打線が何とか点を取って。投手を楽に勝つというゲームをやりたい」と手綱を緩めなかった。

火の玉リリーバーについて、こうも話した。「本当にすさまじい、すごい人生を歩んできた投手。球児が最後に出てきて、あの(登場)曲でファンに見てもらって、マウンドに立つのをまた見たい。その場を僕らがしっかり作っていきたい」。その日に備えて現在2軍で調整している藤川の思いとともに、後半戦を戦っていく。【松井周治】

○…矢野監督は藤川との思い出について「いっぱいあります」と、次々とシーンを浮かべた。05年、当時のシーズン最多登板記録更新がかかった79試合登板の際は「すごいフラッシュやなと試合中にもしゃべった記憶があります」。03年4月11日巨人戦(東京ドーム)では3点リードの9回2死から後藤(現巨人コーチ)に同点3ランを浴びたこともあった。「ある意味、あそこから球児の伝説というのがスタートしたのかなと。やられたことなんですけど、その場面が印象に残っています」と懐かしんだ。