熱投報われず。広島九里亜蓮投手(29)が今季最多142球を投げ抜くも、4敗目を喫した。7回まで2失点。だが、今季最長の8回に力尽きた。2死から3失点して途中降板。最後まで打線の援護もなかった。チームは中日大野雄の前にわずか2安打で今季初の0封負け。3連敗で後半戦黒星発進となった。

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最後まで気迫は失われていなかった。今季最長となる8回のマウンドに上がった。九里は、チームの勝利のため、中継ぎ陣のため、そして自身の信頼回復のために最後の力を振り絞った。だが、2死から安打と四球で一、二塁とし、高橋、阿部には連打を浴びて3失点。142球の熱投も報われず、勝ち星だけでなく、クオリティースタートも逃し、2番手ケムナにマウンドを譲った。それでもマウンドを降りる背番号12に、敵地の広島ファンから拍手で迎えられた。

中日大野雄と投げ合いを演じた。気持ちを乗せた球を低めに集め、ゴロを打たせた。互いに我慢比べとなった5回。先頭の京田の一塁への当たりが一塁堂林の前で高くイレギュラーバウンドする不運から無死三塁のピンチを招いた。1死後、大野雄の当たりは完全に打ち取った投ゴロも、三塁走者が生還し先制点を許した。6回の失点も内野ゴロで失ったものだった。

自身29回目の誕生日に13連戦初戦の先発を託され、気持ちが高ぶった。7月14日から主に火曜日の先発を任され、6戦勝ちなし。苦しんでいた。登板前には「変に気負いすぎずに、まずは自分のピッチングをした中で、結果いい方向に向かえばと思います」と平常心を強調していた。打線の援護がない中で7回まで2失点。佐々岡監督も「(勝ち投手の)権利を与えてあげたいということで向かわせた。投球内容もよかった」と認める投球。右腕は最後まで気迫を前面に押し出した。

勝利と完投という結果はついてこなかった。チームは後半戦初戦で今季初の0封負けを喫し、3連敗。九里は試合後は広報を通じて「とにかく最後まで投げきることができなかったことが悔しいです」と責任を背負うコメントだけを残した。中継ぎの負担を減らす力投も、本人には悔しさしかなかった。次回登板でやり返すしかない。【前原淳】