2位阪神が首位巨人との4連戦初戦を取った。2回に大山悠輔内野手(25)が今季G戦初アーチとなる先制の14号ソロで、宿敵から29イニングぶり得点。この1発を口火にこの回2点を先取し、6回も3点を加えて逃げ切った。前回東京ドームで味わった同一3連戦零封負けの悔しさを甲子園でまず1つお返し。6・5差とし、この4連戦でのマジック点灯を阻止した。残り13試合ある「伝統の一戦」が逆転Vの行方を握る。

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大山の1発がG倒への号砲だった。両軍無得点の2回。先頭打者で巨人戸郷の外角高めスライダーを捉えた。「入ってくれ、と思って走っていた」。打球は浜風に乗って左翼席へ。宿敵からの29イニングぶりの得点が生まれた。

前回は半月前に東京ドームで対戦し、巨人本拠地では57年ぶりとなる3連戦3完封負けを喫した。大山の今季G戦初アーチで、このカードの0行進に終止符。勢いに乗って2回は西勇のスクイズで加点し、6回はサンズの2ラン、小幡の適時打プラス大山の激走生還で3点を奪った。「チーム全員が一丸となっての点数。そういう点数をもっともっと増やしていけるように」。今季2戦で2勝を稼がれ、1点しか奪えていなかった売り出し中の戸郷を攻略した。矢野監督は「悠輔のホームランという形でリズムはできました」と納得顔だった。

大山は19年に並ぶ自己最多のシーズン14本目。「自分超え」に王手をかけたが「ホームランがすべてではない」と語ったことがある。「どういう形で打てたか、どういうスイングができたか。なんで打てたのか…。そういうことの方がよっぽど大事」。今春キャンプから練習試合や紅白戦、ケース打撃後さえも自分の打席を動画で見返してきた。打席で感じたスイングと、外から見るスイングは一致しているのか。時には現代らしからぬ? 静止画を見つめて分析したことも。過程を大事にするからこそアーチは生まれる。「これで満足しているようでは…まだまだです。レベルアップしていきたいのはずっと思っている。1本でも多く打つことを目標にしています」。探求心の結晶が大事な場面で結果に表れている。

首位巨人との4連戦の初戦をまずは1点差で逃げ切った。6・5ゲーム差とし、この4連戦での自力V消滅はなくなった。差を縮めるにはあと13試合ある直接対決に勝つことが近道。矢野監督は「先のことを考えるとどうしても苦しくなるんですけど、ぼくらは1戦1戦、目の前の試合をどう戦うか。1戦1戦を全員で戦っていきたいと思います」と奇跡の逆転優勝へ、勝ってカブトの緒を締めた。【只松憲】