“ライパチ”。幼少期に野球をかじった経験がある人なら、1度は耳にしたことがあるかもしれない。「8番ライト」の略で“下手な人”への不名誉な代名詞だ。ちなみに記者は小学時代、主に7番捕手。「やけにチャンスで回るな」と思った記憶がある。

「“下位打線”と言うのが当たり前だけど、あんまり僕は言うのが好きじゃない」。楽天三木監督は球界に広がる一般的な概念に疑問を持った。「7、8、9番にも1、2、3、4番と違った役割がある。打力が弱い人がいるというイメージになってほしくない」。どんな打順でも、代打を送られなければ1試合に最低3度は打席に立つ。俊足、パワー、巧打と特徴を生かした打順づくりに指揮官は日々頭を悩ませる。

23日の試合で“下位打線”から得点につながったシーンがあった。2回1死一塁。一走は6番ロメロ、打者は8番太田。初球はセーフティーバントの構えで揺さぶり、見逃しストライク。カウント1-2から3球粘り、7球目にエンドランもファウル。8球目に三遊間を破る左前打でつなぐと、9番小深田が先制適時打。1番田中が2点適時打で、この3得点。試合の主導権を握った。

三木監督は「あそこは1つのポイント。僕は去年2軍監督だったけど、ファームの春先は太田も普通にエンドランを空振りしていた。コーチの指導を聞いて身につけているからこそ、ファウルで粘れたりする。うちの外国人はサインをしっかり覚えて何でもやってくれるから作戦が立てやすい」と振り返る。就任当初から「いろんな攻撃ができる状態を作る」ことを掲げ、実践と修正を重ねた成果の一端が見えた。

ちなみにパ・リーグの7~9番の出塁率を調べてみた(23日現在)。

・1位ソフトバンク

7番 2割5分6厘

8番 2割8分7厘

9番 2割8分1厘

・2位ロッテ

7番 3割5分6厘

8番 2割9分5厘

9番 2割9分7厘

・3位楽天

7番 3割0分7厘

8番 2割5分6厘

9番 3割0分8厘

・4位日本ハム

7番 2割9分4厘

8番 2割4分8厘

9番 2割5分3厘

・5位西武

7番 3割4分9厘

8番 2割6分8厘

9番 3割0分5厘

・6位オリックス

7番 3割1分3厘

8番 2割8分4厘

9番 2割7分

上位打線への期待が高まるのはもちろんだが“下位打線”がつながれば、大量点を奪える確率はぐんと上がる。見どころはむしろ“下位打線”にあるのかもしれない。【桑原幹久】