左膝の大ケガから復帰し、チーム最多7勝を挙げている日本ハム上沢直之投手(26)が、29日ロッテ戦(札幌ドーム)で“4度目の正直”に挑む。

今季の3敗はすべてロッテが相手。全試合で本塁打を浴びているマーティン封じへ、秘策を明かした。規定投球回には達していないが、最多勝と最優秀防御率のタイトルは射程圏内。パ・リーグでは01年近鉄の盛田幸妃以来となるカムバック賞受賞も見えてくる。

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選手生命を断たれるかもしれない危機から復帰した上沢が、パ・リーグでは幻となっているカムバック賞受賞へ、苦手のカモメ打線を克服する。29日ロッテ戦に先発。今季全3敗を喫している相手との対戦へ「何回もやられているので、何とか勝ちたい」と意気込んだ。

カムバック賞は、セ・パ各リーグで選定される特別表彰で、ケガや病気などから復活し、好成績を収めた選手に贈られる。上沢は昨季、打球が左膝を直撃し、膝蓋(しつがい)骨を骨折。歩行すら危ぶまれる大ケガから、約1年のブランクを経てマウンドに復帰した。同賞に明確な選定基準はなく、パでは脳腫瘍から復活した北海道生まれの盛田以降、18年間も受賞者がいない“幻のタイトル”だ。

規定投球回数には達していない上沢だが、リーグ3位の7勝を挙げ、防御率2・23は同1位のオリックス山本を上回っている。規定到達へは残り6試合登板で平均8イニングが必要だが、最大の障壁となっているロッテ封じで、最多勝、最優秀防御率のタイトル獲得もぐっと近づく。

苦手克服への鍵は、全試合で本塁打を許しているマーティンだ。対策を問われ「敬遠しようかな。満塁でも…ウソウソウソ」と苦笑い。「マーティンが打てていない右投手のデータを見てみようかな」と研究し、「抑えている投手の投球を見て、そのイメージで投げてみようと思います」。秘策で挑む背番号15が、勝負のマウンドに上がる。【中島宙恵】

◆カムバック賞 NPBタイトルのひとつで74年に制定された。ケガや病気などで、長期間戦列を離れながら、復活をした選手に授与される。パ・リーグでは脳腫瘍から復帰した01年の盛田幸妃を最後に、受賞者がいない。