お待たせ!阪神糸井嘉男外野手(39)が実に3カ月ぶりとなる決勝の2号2ランを放った。同点とされた直後の5回2死一塁で中日勝野からバックスクリーンへ。6月27日DeNA戦以来で、甲子園では今季初アーチとなった。チームはこの日も新型コロナウイルス感染者が判明して窮地にあえぐ。膝痛を抱えながら戦う男が意地をみせ、13連戦の白星発進に導いた。

     ◇     ◇     ◇

糸井が久々にゆっくりとダイヤモンドを1周した。3-3とされた直後の5回2死一塁。勝野の初球144キロ直球を捉えた。会心の感触を「10年ぶりです」と糸井節で表現。放物線は浜風も関係なく一直線に伸び、バックスクリーンに吸い込まれた。1週間ぶりに上がったお立ち台では、ファンの盛り上がりに「やっぱり最高です!」と超人スマイルをはじけさせた。

4年契約最終年の今季は、右膝痛など満身創痍(そうい)のプレーが続く。一時は出場機会も減り、10年ぶりの「7番」も経験したが「やっぱり野球が好き。勝ちたい」というモチベーションが39歳を支えている。コロナ禍で計20選手の入れ替えが行われる中、21日DeNA戦から7試合連続で「3番」で先発し、この間、26打数11安打7打点。9月の月間打率は3割5分2厘と、本来の姿を取り戻しつつある。

「体のことがあり(試合に)出ながら治すというのは難しいところがありますが、徐々には良くなってきている。全力で結果を出せるように毎日、準備はしています」

試合前練習では若手が打撃練習を始める中、自らのペースで外野を1人黙々とランニング。長時間のウオーミングアップで体をほぐし、毎試合に備えている。本塁打は6月27日DeNA戦以来で、204打席ぶりは移籍後最長ブランクだった。おまけに聖地では18年9月12日中日戦以来、約2年ぶり。「甲子園で打てて、本当に良かったです」という言葉に実感がこもった。矢野監督も糸井の久々の一撃を「ベースを1周してる嘉男がまた本当にいい顔で見えた。場面も最高の場面でしたし、最高のホームランでした」と評価した。

この1発で「ユニ・チャーム バックスクリーンホームラン賞」の賞金100万円もゲット。使い道はこれから考えるという。チームは中日に甲子園で今季7戦7勝とし、連勝で13連戦の白星スタートを決めた。首位巨人の背中を追いかけて、スピードを緩めるわけにはいかない。背番号7はお立ち台で「明日も勝つ!」と、ファンに力強く誓った。調子が戻った超人糸井が、そのバットで打線をけん引していく。【奥田隼人】

▼阪神は9月の成績を13勝11敗1分けとし、1試合を残して月間勝ち越しを決めた。7月14勝8敗2分け、8月13勝12敗1分けに続き3カ月連続。