辛抱の末に念願の白星を手にした。ヤクルトの開幕投手を務めたベテラン左腕、石川雅規投手(40)がDeNA戦で5回2/3を4安打2失点に抑え、今季初勝利を挙げた。

現役最多の通算172勝目は、プロ入り19年連続勝利と、球団生え抜き初の40代勝利。記録ずくめの1勝を先発10試合目で打ち立てた。

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勝利のハイタッチ。キャプテン青木に背を押され、石川は先頭でナインを迎えた。「みんなの何とか(勝たせたい)って気持ちが伝わってきた。僕もそれに応えられるように攻められたと思います」。開幕から3カ月半。「のどから手が出るほどほしい」と言った勝利をやっと手中に収めた。

40歳。決して球は速くない。プレートを踏む位置を一塁側、三塁側と変えたり、小さく動く変化球で芯をずらしたり。「ルール内で工夫する。2試合やられているので」。過去2戦で防御率11・05と打ち込まれたDeNAを「技」で5回まで1安打に抑え込んだ。

こらえた。3年ぶりの開幕投手を務め、これまで2試合で勝利投手の権利を持って降板していた。コンディション不良で2軍にも落ちた。「もどかしい、悔しい。僕にもへこむ時期があった」。クラブハウスでは後輩たちを気遣った。負ければ「明日、明日」。好プレーには「ありがとう」と声を掛けた。そして帰れば一転、励まされた。夫人と愛息2人は「前向きに頑張る姿に勇気をもらえるんだよ」と明るく努めてくれた。「石川家としてもチームで戦っていた。今度はおやじが頑張る番」と誓った。

何より準備を大事にする。投手練習1時間前にグラウンドへ。先発翌日も課題があればブルペンで不安を打ち消す。その繰り返しで19年勝ってきた。「1つ勝つのはすごく難しい。この時期の1勝って、恥ずかしいんですけどね。使い続けてくれた監督とコーチに、残り試合は勝利で返していきたい」。同じく10試合目で初勝利した10年前は、後半盛り返して11連勝した。目標の200勝まで。歩みは止めない。【鎌田良美】