楽天涌井秀章投手(34)が2リーグ制後初の、同一リーグ3球団2桁勝利を達成した。ソフトバンク戦に先発し、8回2失点と好投。西武時代、ロッテ時代に次いで4年ぶり8度目の2ケタ10勝目をマーク。3度目のパ・リーグ2ケタ勝利一番乗りで、現役2位の143勝目を飾った。移籍1年目のベテラン右腕がチームの連敗を4で止め、再浮上のゴングを鳴らした。

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にらみもせず、力みもせず、泰然自若を貫いた。涌井がテンポよく投げ込んだ。左足を踏み込み、軸足に体重を残す。鍛えられた腹筋が成す独特の投球フォームで、8回まで108球を涼しい顔で投げ抜いた。安定感抜群の投球に打線も呼応。序盤のリードを悠々と守り、10勝目に到達した。「それに関してもすごい満足できると思う。先発の区切りとして、1年間投げる中で規定投球回と2ケタ。ある程度、投げていく中でしっかりと達成できたのは良かった」とうなずいた。

ボクシング6階級王者の“腹”が安定感を生み出す。ハードパンチャーで成り上がったマニー・パッキャオの腹筋トレを動画サイトで研究し、取り入れた。勝ち続けるメンタリティーは競技が違えど共通点はある。西武、ロッテ、楽天の3球団で2ケタ勝利を達成。プロ16年目、自身8度目の大台はリーグ最速。史上初の3球団での最多勝も待ち受ける。

大リーグで日本人初の最多勝を決めたカブス・ダルビッシュの存在も刺激になっている。「一緒にプロ入りして、ずっと競い合ってきた仲で、一番気になる存在。あいつが意識してくれるように陰で思っています」。プロ2年目に初2ケタ勝利を決めた試合後、会食に出かけた旧友とまだまだ競い合う。この日は21歳石原との初バッテリー。「(早生まれでうさぎ年だが学年では)彼も寅(とら)年。合うかなと思って。勝てたので良かったんじゃないでしょうか」とマウンドから扇の要を優しく支えた。

首位ソフトバンクとのゲーム差は5・5だが「後半戦の大事さは分かっている」と涌井。1勝ずつの積み重ねが状況を好転させる。諦めるには、まだ早い。【為田聡史】

▽楽天三木監督(涌井に)「さすがですね。立ち上がりもしっかりときって得点を与えなかった。素晴らしい投球でした。(石原との初バッテリーは)涌井が上手にマウンドからいろんなことを導いてくれているように見えた」