覚醒の予感漂う1発だ。日本ハム清宮幸太郎内野手(21)が、値千金の同点弾を放ち、連敗ストップに貢献した。1点を追う4回1死走者なしで、右中間に6号ソロ。ここ4戦2発と持ち前の長打力を発揮し、自己シーズン最多タイにあと1本とした。チームは競り勝ち、負ければ自力でのクライマックスシリーズ(CS)進出の可能性が消滅する危機だったが、回避した。

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描いた放物線は、清宮らしさが詰まっていた。1点を追う4回1死走者なし。2ボールからの3球目、高めの148キロ直球に素直に反応した。「1打席目をしっかり振り返って、臨めたので良かった」。舞い上がった打球は、右中間席へとまっしぐら。「角度が良かったので。でも、しっかり走りました」。6号ソロで振り出しに戻した。

三塁側ベンチ前で小さく弾みながら、満面の笑みでチームメートに迎えられた。「(西川)ハルキさんがやっていたので…」と、昨年は封印していた、本塁打後のパフォーマンス「キヨダンス」も披露した。9月27日オリックス戦以来、ここ4戦で2発。短期間で刻んでいるが、試行錯誤は絶えない。ホームゲームでは小笠原ヘッド兼打撃コーチと居残り練習、打席での思考、配球などをおさらいしながら、現状打破を目指してきた。「いい練習を積み重ねるだけなんだと思います」と積み重ねの一端を見せた。

成長曲線の角度を上げてきた。1、2年目に7本塁打。自己最多まで、あと1本に迫った。「全然、もっとほしいと思っている。取り返さないといけない部分が、まだまだある。少しでも多く、取り返さないといけない」と覚悟がにじむ。3年目の今季はミスも多く、チーム低迷の責任を感じ、意気消沈していることもあった。栗山監督は「こっちが勝つために信念を持ってやっているつもり」と天性の長打力に期待し、起用を続けてきた。

負ければ自力CS消滅の危機から、清宮の一振りがチームを救った。指揮官は「見ていなかった!」とニヤリとしたが「元々は当たればホームランが打てるバッター。よくなってきた部分は、ちょっとだけ」と一定の評価を与えた。秋色増してきた10月初戦。清宮を筆頭に、チームの意地を見せる時がきた。【田中彩友美】