猛虎の若き主砲候補が、歴史的デビューを飾った。阪神のドラフト2位井上広大外野手(19)が中日戦に「7番右翼」で昇格即スタメン出場。球団高卒新人野手のデビュー戦先発出場は68年川藤幸三以来の抜てきとなった。3打数無安打でプロ初安打はお預けとなったが、将来性豊かなスラッガーがプロの第1歩を踏みしめた。

  ◇   ◇   ◇

若きスラッガーの歴史的デビューに、敵地ナゴヤドームがどよめいた。「7番、ライト、井上」の場内アナウンス。ドラフト2位ルーキーがプロ初昇格で即先発出場。球団高卒新人野手のデビュー戦先発は、68年川藤以来52年ぶり。「1つ1つのレベルが、とても高いと感じた」。プロ初安打はならなかったが、背番号32が豪快なスイングを披露した。

球界屈指の好投手に対し、果敢にバットを振った。プロ初打席は2回2死一塁。カウント0-1からエース大野雄のフォークに初スイングで空振り。3球目もフォークに空振りすると、4球目の低め140キロツーシームにバットは空を切った。スラッガーらしい3スイングの三振デビュー。防御率トップの左腕に3打数無安打2三振。「(膝下に)何度も同じボールを投げられ、同じような空振りをしていた。そこはもっと練習して対応できるようにしていかないといけない」とプロの洗礼も浴びた。

2軍で英才教育を受けてきた。ウエスタン・リーグで61試合に出場し、打率2割2分、8本塁打、32打点をマーク。平田2軍監督のもとで全試合4番起用され、本塁打、打点で2冠の成績を残した。13日夜に初昇格を伝えられた。「すごくビックリしました」。母貴美さんには電話で報告し、「頑張ってきーや」と、優しく背中を押された。

矢野監督は合流した井上に「今日からがスタートラインだよ」と声をかけた。指揮官は結果もさることながら「チームとして大事にしている全力疾走や、将来ホームラン王をとるけど凡打後の走塁もすごいよねとか。そういう部分をしっかり意識する選手になって。スケールの大きな選手になってくれれば」と期待を寄せた。

試合前には本塁打リーグトップの大山から「小さくはならないように」と、アドバイスも受けた。「その(スイングの)中で、どう対応していくかを練習で突きつめていきたい」と井上は言う。大きく成長していくため、さらに高いレベルで技術を吸収する。シンデレラストーリーは始まったばかり。虎の将来を担う19歳が、大きな1歩を踏み出した。【奥田隼人】

▽井上の母貴美さん(自宅でテレビ観戦)「課題もたくさん見えたと思うので、今日はすごくいい経験になったと思います。がんばってほしい、それだけですね。ここからだと思います」