強い、強い、強すぎる。流れを誰にも渡さない。どんな小さなスキも見せない。ソフトバンクが貪欲に優勝に向かう、戦う気迫をグラウンドで表現した。

1-1の同点とされた直後の6回。無死一、三塁のチャンスで工藤監督は勝ちにこだわる決断をした。3球目にセーフティースクイズのサイン。甲斐がうまく一塁側に転がし、三塁走者明石がホームイン。チャンスがさらに広がり、柳田、グラシアルの連続適時打が生まれ試合が決まった。

工藤監督 のどから手が出るほど欲しい1点でした。その後もうまく(打線の)上位にまわれば点が入るという思いでした。

今季2度目の「決勝スクイズ」だった。今季初は9月は負け越しが決まり、2位ロッテにゲーム差なしに迫られて迎えた10月1日楽天戦(楽天生命パーク)で同じく甲斐に出したスクイズで、負ければ2位陥落の危機を脱する執念の作戦だった。この日は11連勝中で迎えて勢いは最高潮。スクイズ以外の選択肢もあったが、指揮官はあえてスクイズを選んだ。札幌から移動して迎えたナイター。野手は打撃練習をせずに試合に臨んだ。コンディションを考えれば最適な方法だった。「みんなが次へ次へとやってくれている。中村晃くんが3四死球と1安打で出塁してくれてタイムリーがでて、打線がうまく機能している」。6回4点、8回3点。そのスイッチは工藤監督が押した。

ロッテが敗れマジックは4。21日に点灯したマジック8が、わずか2日で半分となった。「あまり気にしないで明日(24日)勝てるようにしたい。選手は意識はするでしょうが、試合に入れば集中していきたい」。もうゴール目前となっても、指揮官は最後まで気を緩めるつもりはない。【浦田由紀夫】