広島からドラフト2位指名された天理大・森浦大輔投手(22)が“未知の地”でプロ人生をスタートさせる。最速148キロ左腕は28日、奈良・天理市内の同大学で永尾教昭学長に指名を報告し、会見。広島を訪れた経験はなく、北海道と東北、九州も未踏であることが判明。高校、大学と親しんだ天理カラーの紫からカープの赤に“衣替え”し、ピュアな22歳が心機一転、勝負をかける。

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大学生なら全国いろんな場所を旅行して…と思われがちだが、森浦は違った。「広島には行ったことがないので…。石原(貴規)さんにいろいろ教えてもらいたいです」。1年早くドラフト5位で広島入りした天理大の先輩にお願いした。

広島は新幹線で通過したことすらない。中学の修学旅行で沖縄、大学のキャンプで愛媛は行ったが、本州の西限は岡山。東限は東京エリアで、ちなみに九州、東北、北海道も知らない。新天地、また交流戦で訪れるであろうソフトバンク、楽天、日本ハムの本拠地も初体験となる。

「でも、不安はないです。むしろ楽しみ」。天理高卒-天理大の経歴では初のプロ野球選手となる男は7年間、イメージカラーの紫に慣れ親しんだが、広島の「赤」は私服で着たこともなく、縁がなかった。

言葉少なでもの静か。好物は焼き肉でも、見た目は完全な草食系だ。野球部の島田勝巳部長が入学当初「彼はどんな子?」と他の部員にリサーチして「真っすぐの伸びがすごいんです」と聞き、初めてその存在を認識したというエピソードもある。そんな青年が、ファンの熱さで12球団屈指の土地に飛び込む。名須和哉副部長は「見た目はあれですが、非常に芯の強さを持っています。コアなファンに認めていただければ…」と、温かい目で見守ってもらえることを願った。

おとなしい森浦なりの覚悟を持つ。来年2月のキャンプインまでに「体重4キロ増」を誓った。大学入学時68キロだった体重を、1日4食で71キロと4年で3キロ増やしたが「体を作らないとけがをする」と言い、1日5食にペースを上げて、約3カ月で「75キロまで」増量すると宣言した。

キレのいい速球とチェンジアップが持ち味で、高校時代から元巨人の杉内を参考にフォームを作ってきた。広島では1学年上でエース級の活躍を見せる右腕森下に「落差のあるカーブ、緩急を教わりたい」と話した。「僕は静かな方なんですが…しっかりチームになじんでいきたいです」。見た目からはうかがえない決意を胸に、生まれて初めて広島の土を踏む。【加藤裕一】