広島は19日に来季のコーチングスタッフを発表し、4年ぶりの復帰となる河田雄祐ヘッドコーチ(52)がマツダスタジアムで就任会見を行った。会見では再建論を熱く展開し、さっそく秋季練習を視察。同学年の指揮官の隣で1時間以上意見交換を交わした。復帰発表初日から熱き参謀のやる気がほとばしった。

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来季の光景が浮かんだ。午後から始まった打撃練習をベンチ前で見つめる佐々岡監督の隣にワイシャツ姿の河田新ヘッドコーチがいた。午前中に就任会見を終え、午後の練習を視察。ジャケットを脱いで同学年の指揮官と時折ジェスチャーを交えながら、互いに何度もうなずきながら、意見交換。2人だけの時間は1時間以上続いた。

「とにかく選手が体の芯から熱の入った動きがキャンプから出来るように、こちらから仕向けていくのが第一の仕事かなと思っている。あとは若いコーチ陣と一緒に成長できれば。カープの選手たちは野球小僧ばかりいるのでね。野球を楽しんで相手に勝つんだという気持ちを出せるように、仕事をしていければいいかなと思っています」

3年間離れたからこそ、広島の可能性を強く感じている。「ポテンシャル、スキルはセ・リーグ6球団で比べても間違いなくトップ」。リーグ連覇の巨人ではなく、打倒パ・リーグを掲げる。「個人的に欲を出しても仕方のないことなんですけど、レベルの高いパワーあふれるパ・リーグに何とか互角に戦えるチームをつくれれば」。会見から4年ぶり復帰となる広島再建への熱い思いがあふれた。

青写真は描いている。「根拠のない盗塁は何も意味を成さない。ほかにも動かし方がある。いろいろと手を打たないといけないところはあると思う」。盗塁は“数”ではなく“成功率”にこだわる。打ち勝つ野球が目立った今季の攻撃パターンから脱却し、打てなくても得点できる「真の機動力」を浸透させていく考えだ。

リーグ優勝した巨人増田の貢献度を例に挙げ「シーズン通して強いチームというのはベンチメンバーのレベルが高い。曽根であり、上本であり、あの辺の選手たちがもう一つレベルアップするのはチームにとって大事」とスペシャリスト育成も掲げる。また、FAの動向を逆取材するように田中広の名前も挙げた。「残るんでしょうか? 広輔が残ってくれて、核になってくれないと話にならない」と低迷する主力の復活を後押しするつもりでいる。

ヘッドコーチとして広島に帰ってきた。選手を分け隔てなく叱れる指導者としてだけでなく、若いコーチ陣のまとめ役として、同学年指揮官の参謀として。河田新ヘッドにかかる期待は大きく、そして同じくらい河田新ヘッドが掲げる野望も大きい。【前原淳】

▽広島鈴木球団本部長 守備走塁意識の再構築。彼はコミュニケーションを取るのがうまいので選手間、コーチ間のコミュニケーションを取って欲しい。それと、野球経験が豊富なので、自分の持っているものをすべて吐き出してコーチも育てて欲しいと伝えてある。

◆河田雄祐(かわだ・ゆうすけ)1967年(昭42)12月22日、東京都生まれ。帝京から85年ドラフト3位で広島に入団。95年オフに西武へ移籍し、02年引退。通算574試合、137安打、53盗塁。引退後は西武で2軍打撃コーチ補佐、1軍外野守備走塁コーチなどを歴任。16年に広島の1軍外野守備走塁コーチとして伝統の機動力に磨きをかけ、連覇に貢献。18年からヤクルトで1軍外野守備走塁コーチを務めた。右投げ左打ち。