巨人が昨季の4連敗から雪辱を期す日本シリーズ。下馬評はソフトバンク有利の中、8年ぶりの日本一を目指す戦いが開幕した。原辰徳監督(62)の思考や、チームの話題にフォーカスする巨人担当による日替わり連載「G-Zoom」をお届けします。

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「有利とか不利とか、そんな論理はね、もうすぐ90年を迎えようとしている野球界に対して失礼ですよ。何をファンが望んでいるか。スリリングな面白いシリーズになると思いますよ」

35年ぶり2度目となる全試合DH制の採用が決まった直後、原監督が発した言葉だ。例えば打撃がいい菅野は今季4安打3打点。一方でシーズン中に打席に立たないソフトバンク投手陣が「9番」に入れば、巨人は簡単にアウトが1つ取れる。そんな「有利」「不利」の視点は度外視。野球界の大局を見て賛同した。

第3次政権となった19年以降、セ・リーグのDH制導入を提言し続けてきた。7月末までのトレード期間を撤廃し、シーズンを通して移籍の活性化を求めるなど、球界発展のための発言を繰り返す。批判を受けるのは承知の上。それでも臆せずに持論を語る。

「正しい批判であるならば、それは耳を傾けるべき。『50人の賛成、50人の反対』だったら胸を張るべき。『49人の賛成、51人の反対』であるならば、やはり耳を貸すべき」

賛同してくれる人は5割いたら十分。そんな思考は現役引退後、NHKでキャスターを務めた3年間で培った。自らの意思で野球界の外に出て、社会勉強することを求めた30代後半。テレビ局を通して、視聴者からの反応は随時伝わってきた。

「最初は万人に『自分の言っていることは正しい』と何とか伝えようと思った。でも世の中では、無理ということが分かった。8割ぐらいはほしいなとも思ったけど、面白いことが言えない。半分で十分。最終的にはそこまでいったよ。50人の逆説があっていい。むしろそれがいいんだと」

全体練習を再開した12日のジャイアンツ球場。ネット裏のスタンドに腰を下ろし、4球団競合したドラフトで自らを引き当ててくれた恩師、藤田元司元監督の言葉を思い返した。「経過は大切。しかし結果が全てだ。藤田さんがよく言ってたな」。そんな思いで挑む日本シリーズ。節目をどんな言葉で表すか。「50人の反対」を受け入れる強さが、原監督の発信の根底にある。【前田祐輔】