ソフトバンク栗原陵矢捕手(24)が「シリーズ男」に名乗りを上げた。京セラドーム大阪で開幕した「SMBC日本シリーズ」に初めてスタメン出場し、初本塁打を含む3安打4打点と打ちまくった。初打席の2回無死一塁で、巨人菅野から値千金の先制2ラン。6回にも中押しの2点適時二塁打を放った。チームの日本シリーズ9連勝はプロ野球記録。ラッキーボーイが勢いを与え、4年連続日本一へ死角なく歩を進める。

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瞬間、菅野をのけぞらせた。栗原が巨人のエースからたたきこんだ2ランは、単なる先制以上の重さがあった。

2回無死一塁。2ボールから甘く入ったスライダー。「クライマックスであれだけボロボロにやられていた。何も背負うものはないと思って、むちゃくちゃやってやろうと思っていました」。シリーズ初スタメン、ど緊張の中でがむしゃらに打った。菅野とは、プロ初打席だった17年6月13日の交流戦(東京ドーム)で、代打で二ゴロに打ち取られて以来2度目の対戦。会心のリベンジで喜びを爆発させる姿に、ベンチのボルテージもグッと上がった。

クライマックスシリーズ(CS)では先発メンバーで唯一、無安打に終わった。王球団会長から「三振してもいい。思い切っていけ」と背中を押された。故障でメンバー外の今宮からは「全国に栗原という名前をアピールしてこい」とLINEをもらった。「練習でやれることは全部やってきました」と気持ちを切り替え、初戦に臨んだ。

円陣ではたびたび、リーダー役の松田宣からムチャぶりを食らう。栗原は芸人のギャグやモノマネを交え、巧みに仲間を笑わせる。シーズンで主砲柳田に次ぐ17本塁打、73打点を挙げた捕手登録の万能型。打力を見込み、開幕から84試合スタメン起用を続けた工藤監督に応え、ムードメーカーとしても欠かせない存在になった。

4回2死の第2打席でも右翼線へ二塁打。6回2死一、三塁では、左中間へ中押しの2点二塁打を放った。シリーズ初先発でいきなり3安打4打点。無安打だったCSから一転、打率10割でシリーズ男のムードも漂ってきた。「明日の自分はどうなるか分からないけど、ベストを尽くすだけです。チームが勝てばいいです」。未来へのロマンあふれるスラッガー候補の「マロン(栗)砲」。大収穫の秋にする。【山本大地】

▼栗原が先制2ランを含む3安打4打点。3安打はすべて長打で、日本シリーズで1試合3長打は15年第3戦で3本塁打の山田(ヤクルト)以来。シリーズ記録には98年第5戦佐伯(横浜)の4長打(二3、三1)があるが、球団では59年第1戦岡本(本2、二1)64年第5戦広瀬(二3)以来56年ぶりの最多タイ。なお1試合4打点は、チームでは00年第2戦城島、15年第4戦李大浩、18年第3戦デスパイネ以来で、こちらも球団最多に並んだ。

<栗原陵矢(くりはら・りょうや)アラカルト>

◆生まれ 1996年(平8)7月4日、福井県生まれ。

◆サイズ 179センチ、75キロ。右投げ左打ち。

◆球歴 春江工で2年春にセンバツ出場。3年時は高校日本代表で主将を務めた。14年ドラフト2位でソフトバンク入りし、3年目の17年6月13日巨人戦で1軍デビュー。今季推定年俸1000万円。

◆盛り上げ役 18年ファンフェスティバルでは開会あいさつで、サンシャイン池崎のギャグを披露。最近では試合前の円陣で、松田宣のむちゃぶりに応えてアンパンマンなどのモノマネをこなしている。器用さと度胸を持ち合わせる。

◆ケバブ ペイペイドームでは「栗原選手のビーフ&チキンケバブサンド」を発売。安打や本塁打時に見せる、ケバブを切るようなポーズにちなんだもの。ポーズの元ネタは大リーグ・パドレスのタティスから。

◆アイブラック ドーム球場やナイターでも使用。「ドームでは効果はわかりません(笑い)。ワクワクするような、試合を楽しむ感じを出すためです」。松田宣からはしばしば、試合前に変な形にいたずら描きされるようだ。