巨人が昨季の4連敗から雪辱を期した日本シリーズ。4連敗でソフトバンクに敗れ閉幕した。原辰徳監督(62)の思考や、チームの話題にフォーカスする巨人担当による日替わり連載「G-Zoom」は最終回。

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11月21日午後6時10分、その人は自宅のテレビの電源を入れ、Tシャツ姿でプレーボールの瞬間を迎えた。先発マウンドに上がったのは、尊敬する先輩のエース菅野。「頑張ってください」とエールを送りながら、いつもなら「その場に立てなくて悔しいし、投げたかった」と芽生える感情とは全く別の思いがわいた。

「自分が対戦するなら、どう攻めるだろうか。勇人さんは、どのボールを待ってるんだろう?」

ソファに腰掛けながら、1月の自主トレでともにした菅野、ソフトバンク千賀のボール、配球などに思いを巡らせながら、試合を見入った。振り返れば、12年の日本ハムとの日本シリーズ。第4戦に先発し、7回無失点と好投した。高卒2年目の若武者は「緊張もなかった。うわーって感じで楽しく投げられた」。

あれから8年。プロ10年目、28歳の右腕が突きつけられたのは戦力外だった。「プロの世界でまだまだ勝負したいと。迷いは全くなかったですし、ずっとおやじにも言われてましたし、それが願いでもあったので」。17年2月1日、宮崎春季キャンプが始まる未明に急性心筋梗塞で56歳で亡くなった父透さんの言葉を思い出していた。

「1年でも長く頑張りなさい」

巨人からの通告後、変わることなく、ジャイアンツ球場で練習に励む。シーズン終盤に違和感を覚えた右肩も順調に回復し、ブルペンでの立ち投げも再開した。「状態は良くなっています。苦しさもありますけど、新たな挑戦ができると前向きに考えて。この経験が、いいものだったと思えるように頑張ります」。

10年ドラフト2位で巨人に入団。2年目に開幕ローテ入りし、13年には開幕投手も務めた。スポットライトが当たる日本シリーズとは対照的に、今は陰で汗を流す。「今、思うのは本当に周りの方に支えてもらっているなと。やっぱり、プレーで恩返ししたいです」。宮国椋丞。再び光を浴びるその日を思い描き、闘い続ける。【久保賢吾】(おわり)