今年も強かったソフトバンク。3年ぶりのリーグ優勝と4年連続日本一という最高の結果を出した。あの興奮をもう1度味わうため「担当記者が選ぶ今季のベストゲーム」と題して、3人がこの一戦を振り返る。まずはキャップ浦田が選んだ7月10日楽天戦(ペイペイドーム)。そう、あの日はつい興奮してしまいました。

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ソフトバンク柳田悠岐外野手が今季放った本塁打の中で、一番だったと確信している。1-1で迎えた延長10回裏。先頭打者で打席に入ったスラッガーは、楽天シャギワの外角球をバックスクリーン左へ運んだ。フルスイング後、振り切ったまま、しばらく「余韻」に浸るほどだった。この7号ソロは、サヨナラ勝利以上の価値があった。

この試合から「通常」が少しだけ戻っていた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、球界は揺れた1年だった。開幕は約3カ月遅れて6月19日となった。そして7月10日は開幕後初めて観客を入れた日だった。場内アナウンスや攻撃中の音声による応援、選手の声しか響かなかったスタジアムに「拍手」が戻った。1839人。これまで4万人近いファンで埋め尽くされることが多かったペイペイドームにすれば寂しい数字だが、選手には強力な「助っ人」だったに違いない。工藤監督も「ファンの拍手が聞こえて身震いもあった。感動する試合でした」とコメントを残している。「ギータ!」の声援の中、柳田がお立ち台で「拍手もあって、選手たちはいつも以上に引き締まったと思います。うれしいです」と笑っていたのが印象的だった。「1日も早くファンの前でホームランを打ちたい」と言っていた。その“開幕戦”で劇的なサヨナラ弾で応えたのだ。

さらに、福岡ドーム時代から積み重ねてきた本拠地での通算勝利数が1000に達する節目となった。お祭り男の松田宣が今季初アーチを放って「初アツオ!」を披露したのもこのゲーム。前日までの5位から4位に浮上し、ここから5連勝で一気に2位となった。リーグ優勝への最初の弾みになったことは間違いない。【浦田由紀夫】