日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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阪神で年賀式が開かれた。例年はメーカー、マスコミなど球団にかかわる関係者が集ってにぎわうのが恒例だが、状況は一変した。球団役職員だけで、代表取材に限定される異例の年始になった。

関西に近鉄球団があった当時は、形式を変えて開催された年もあった。関西3球団が持ち回りで、系列ホテルで一堂に会した。関西全体を盛り立てようという姿勢の表れでもあった。

球団トップが威勢の良い年頭のあいさつで口火を切った後、新任紹介、担当記者の引き継ぎ、名刺交換など、新たに迎えるシーズンの行方をざっくばらんに話した。今となってはなつかしい“密”の時代だ。

阪神ではオーナーの藤原崇起(電鉄本社会長)が球団社長を兼務する新体制の門出になった。今年は取材にも規制がかかって、残念ながら表情もつかめず、言外に感じる材料がないので手応えはわからない。

ただ外国人を中心にした大型補強は、藤原から“決裁”が下りないと決まらなかった。オーナー兼球団社長のキャスティングで「本社」「球団」がよりつながったことで今回、大型補強を押し切ることができた。

阪神では百戦錬磨だった南信男が9シーズンにわたって球団社長を務めた後、15年オフの金本監督誕生と同時に社長に就いた四藤慶一郎が2年で退任。17年オフに継いだ揚塩健治も3シーズンの短期在任で退いた。

今回の球団社長人事では、球団ルールに反した行動で複数選手が新型コロナに感染し、球団管理の不十分さが露呈された影響が大きい。社会的責任を考えた阪急阪神HDトップも看過するわけにはいかなかった。

これだけ戦力を整えたのだから、打倒巨人は「現場」の監督矢野の采配が最大のカギといった見方はできる。だが“アフターコロナ”を見据えたチーム作りは、球団フロントの手腕にかかっている。

外国人に依存したチーム作りは、そのうちファンに飽きられる。チームはフロントが作るものだ。藤原は現場に近い立場で球団運営に携わると言って兼任の形で“ケジメ”をつけた。勝負はここからだ。(敬称略)