“4球”に、超一流の神髄がこもった。楽天田中将大投手(32)が7日、沖縄・金武での1軍キャンプで加入後初のブルペン投球を行った。8年ぶりの古巣のユニホームを身にまとい、座った正捕手候補の太田へ40球。ブルペンを独占し、張り詰めた空気感の中、実戦さながらに全球種を試投した。日本仕様への適応は順調で、今月中の復帰登板へステップを踏んだ。

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18・44メートルを制圧した。残り4球。田中将が両肩を上げ、胸を張り、ギアを入れる。左打者に対し、直球を外へ、内高めへ。左足の着地音から瞬く間に、構えたままのミットが鳴る。外角スライダーを見せ球に、最後は内角へ直球を差し込んだ。「OK! ありがとう!」。実戦さながらの配球、迫力に、感嘆のため息が漏れた。

マウンド後方で見守った石井GM兼監督は、日米177勝右腕を“マタドール”になぞらえた。「闘牛士だと牛に向かう部分。バッターと対峙(たいじ)する時の独特な緊張感を練習から持ち合わせてる特別な投手」。赤いマントはなくとも、バットを持つ“猛牛”たちを身一つでいなし、仕留める。海を渡った投手同士の世界観で称賛した。

一仕事を終えた田中将は、充実感を漂わせた。「疲れました(苦笑い)。すごく見られてるなと。選手としてはありがたい。カメラのシャッター音もバシャバシャとなる中で自然と力は入りましたね」。メジャーキャンプでのブルペン投球は20球程度が目安も、40球を重ねた。昨季挑戦したワインドアップから、今季採用するノーワインドアップで全球種を試投。NPB球、金武の軟らかい土にも対応し「自分が思ってるより投げられたので良かった」と順調ぶりをにじませた。

同GM兼監督は「キャンプ中に次のステップを踏んでも良い段階ではある」と見据える。今キャンプは22日に打ち上げ。シーズン登板初戦までに4、5回の実戦登板を想定しており、早ければ同キャンプ地での20日日本ハムとの練習試合で復帰登板の可能性もある。8年ぶりに「TANAKA 18」と背に刻まれたユニホームを着用した田中将は「正装なので気持ちは入る」と引き締める。身も心も、着々と準備を進めている。【桑原幹久】

▽楽天小山投手コーチ(田中将の打撃投手、フリー打撃での登板予定に)「そこはないですね。ベテランの投手は1発目のゲームが打撃投手、今日のシート打撃みたいなイメージで入ってくる形になると思う」

▽楽天太田(田中将のブルペン投球を受け、ラスト4球に)「配球も試合さながらというか、散らして投げて、それまでの球よりも実戦に近い球でした」

▽楽天伊志嶺ブルペン捕手(田中将のブルペン投球で左打席に立ち)「見ているだけでも雰囲気が違う感じがします。打者が立って周りの方も『あの4球は変わった』と言っていました」

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