楽天田中将大投手(32)と巨人菅野智之投手(31)の球界最高峰右腕が、再び運命の十字路で交差する。9日、沖縄・金武と那覇でそれぞれブルペン入りした。

8年ぶりの“国内競演”。田中将の大リーグ移籍前年の13年、菅野は1年間の浪人生活を経てプロ入りした。同年の日本シリーズ第2戦で投げ合い、田中将が完投勝ち。同第6戦は菅野が7回2失点で、レギュラーシーズン無傷の24連勝の田中将に土をつけた。1勝1敗のまま止まっていた針が動きだす。交流戦、日本シリーズの直接対決-。そして東京オリンピック(五輪)を戦う侍ジャパンでの共闘にも期待が膨らむ。プロ野球の夢がつまった背番号「18」。「楽天田中将×巨人菅野」が球界を盛り上げる。

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「パーン! パーン! 」。静かなブルペンに乾いた音が響き渡った。菅野がオール直球で今キャンプのテーマを実証した。1月に渡米したこともあり、今季初めて捕手が座った状態でのブルペン。「実際にキャッチャーも座って、報道陣の方がいると力も入るし、自分の中でようやく始まったなという感覚」と26球力強い真っすぐを投げ込んだ。さすがの制球力も健在で、捕手小林のミットが動いたのは4球だけだった。

プロ8年間で101勝を挙げた実績があっても、恐れず新しいことに挑戦するのが大エースのすごさだ。今年はプレートの踏む位置を一塁側に変えた。昨季は真ん中なども試し、三塁側から一足分だけ空けたところに落ち着いていた。「戻す可能性はありますけど、軌道だったり、これまでの見え方との違いとかを確認して、これからも投げていきたい」と21年バージョンへとアップデートする。

50キロほど離れた楽天がキャンプを張る金武の話も耳に届いている。連日ニュースになる田中将について「大いに盛り上げてもらっているので、僕も負けずに頑張りたい」と闘志を燃やし、野球界のさらなる発展を思い描いた。セ・リーグを代表する背番号「18」も那覇から明るい話題を発信する。【久永壮真】

▽巨人小林(菅野の投球を受け)「良かったと思います。捕手目線でボールの軌道について少し話をしました」

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8年ぶりに楽天に復帰した田中将は“日本仕様”への適応にいそしむ。今キャンプ2度目のブルペンで前回と同じく全球種を試投。違いは1球目から打者に立ってもらい、さらに審判にストライクゾーンを確認する場面だ。42球目。外角真ん中直球を狙い浮いた。判定はボール。「今の高いですか?」「高めのストライクはどこまでですか?」と審判へ、「今捕ったところはどこ?」と捕手の下妻にたずねた。

ストライクゾーン高めの真っすぐ。米国の強打者をなぎ倒し続けるための肝として活用した。ここまで2度のブルペン全94球中9球で高めを宣言。日本では低めへの意識が徹底される半面“盲点”に。下妻は「直球ですけど1つ新しい球種が増えたような」と表現し、続けた。「高めを要求する時はストライク先行でボールになってもいいくらいの考えだった。日本では低め低めの概念が強いですけど、そういうのがなくなるんじゃないかなと」。

田中将は投球後、ブルペン時とは異なるベテランの審判と立ち話で意見交換。左手で捕球の型を作り、身ぶり手ぶりで感覚、考えをすり合わせた。ストライク19、ボール35。海の向こうで磨き上げた能力を最大限発揮するために、意味のある54球を積み上げた。【桑原幹久】