現状を打破するために声を発することは、たやすいことではない。それでも、巨人原辰徳監督(62)は現場の思いを代弁した。

22日の那覇キャンプでの練習後、「言いたいことがあるんだよね」と切り出した。テニスの全豪オープンでは選手が隔離期間内に1日5時間の外出、そのうち2時間は練習が認められていた。原監督は複数回の検査を実施するといった厳しい制約があってこそとした上で「練習ができる時間というのはすごくグッドアイデア。わがスポーツ大国、日本でも、というのは思いましたね。特にオリンピックがある。日本式の形でできるのならば」と、スポーツ界の発展を願って提案した。

現状では、入国後2週間は部屋の中など限られた環境でしか練習ができない。そのことは、アスリートにとって、相当なマイナスとなる。「やっぱり2週間の隔離というのが、すごいネックだから。取り返すには相当な時間がかかる。少なくとも倍、3倍の時間はかかる。(練習できれば)復帰はすごく早くなる。全然違うと思う」。選手が積み重ねてきた鍛錬を無駄にしないためにも、検討する余地はあると力説した。

原監督は常に、俯瞰(ふかん)的に大局を見ている。新型コロナウイルスの影響も考慮して暫定的なDH制の導入を提案。外国人の入国制限についても「もちろん厳しいルールは守る」と前置きしたうえで「世の中に迷惑をかけることなく、緩和措置がないかなと思いますね。野球界だけじゃないですよ。アスリートにとって、2週間、何もしないのはどういうことか」と堂々と言葉として世の中に届けた。

発信の根底にあるのは「プレーヤー」の心境だった。「不安で不安で、しょうがないでしょう」と選手を思いやっている。だからこそ、感染拡大防止策を講じながら無観客で過ごす今年の春季キャンプ中、選手の気持ちを切らさないようにする姿が目立っていた。23日のヤクルトとの練習試合(浦添)前の打撃練習では、球界最長身2メートルのドラフト5位秋広優人内野手(18=二松学舎大付)に声を掛け、呼び寄せた。自らトスを上げ、身ぶり手ぶりで打撃指導を行っていた。

制約のある日々を憂うのではなく、その中で何かできることはないか-。選手が、ファンが、スポーツを楽しめる環境をつくるために、原監督は思いを巡らせながら、声を発し続けている。【浜本卓也】