クロン劇場再開幕。広島ケビン・クロン内野手(28=ダイヤモンド・バックス)が1軍復帰戦で2安打3打点と活躍し、勝利に貢献した。来日初の適時打で先制も、守備では来日初失策が逆転につながった。それでも8回1死満塁で逆転の2点二塁打。得点力に課題があった打線の起爆剤として緊急招集され、期待に応えた。2カードぶりの勝ち越しで、再び貯金生活。3位に浮上した。

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鋭い打球は、ワンバウンドで左翼フェンスをたたいた。逆転の走者の生還を確認したクロンは、二塁ベース上で自軍のベンチに向けて左腕を突き上げた。総立ちで喜ぶ広島ベンチの中で、佐々岡監督も両手を強くたたいた。1点を追う8回。1死満塁で中日祖父江が多投したスライダーにタイミングを合わせ、6球目を仕留めた。

「自分の仕事は走者をかえすこと。それができて良かった。二塁に行ったときにベンチでみんなの喜ぶ顔を見られて良かった」

緊急招集に応えた。クロンは上半身のコンディショニング不良で、5日に出場選手登録を抹消された。前日の試合終了後、佐々岡監督は報道陣にクロンの即昇格について「いや。(2軍の)試合をしてから、もう1回(2軍首脳陣に)内容を確認する」と否定的だった。だがその後、宿舎までのバスの車内で試合を何度もシミュレーション。得点力不足に悩む打線に、一発長打のある助っ人の必要性を感じ、2軍戦出場は2試合で名古屋に呼び寄せた。ひらめきが的中した指揮官は「急きょだったけど、よく打ってくれた」とたたえた。

復帰戦は、クロン劇場と化した。復帰初打席の2回2死二塁は、中日先発小笠原の直球を捉え、右翼フェンス直撃の来日初適時打。チームに先制点をもたらした。1点リードの6回は一塁守備で先頭大島の正面の打球を捕りきれず、来日初失策。そこから逆転を許し、3年ぶり先発の高橋昂の白星も消えた。「エラーをして自分自身に怒りを感じていた。燃えるものがあった。彼(高橋昂)にも後で謝ったんだ」。自身のバットで、結末をハッピーエンドに変えた。

チームは2カードぶりに勝ち越し。再び貯金1となり、3位に浮上した。昨年少なかった逆転劇は今季、リーグ最多5度目。得点力不足改善に、光が見えた。【前原淳】

○…栗林がリーグ単独トップとなる6セーブ目を挙げた。2点リードの9回。先頭三ツ俣に3球連続ボールも、最後は高めの球を振らせた。木下拓を力で右飛に打ち取り、根尾を空振り三振。「元々低めに投げようとして高めに浮いていたので、逆に開き直って真ん中付近に強い球を投げようと思った」。勝利とセーブの両方を新人がマークしたのは、球団初。初登板から9戦連続無失点でセーブを積み重ねる。

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