「負けない男」が完全体に、1歩近づいた。楽天田中将大投手(32)が粘りの投球で自身2連勝で2勝目を挙げた。

今季実戦登板最多の106球を費やすも6回5安打無失点。何度も叫びながら、気迫で要所を締めた。日本球界の打者、ルーティンへの対応を重ね、故障の影響も感じさせない。チームは2分けを挟み、今季最長の4連勝。13年の24連勝を含む国内28連勝を記録した右腕のエンジンが、熱を帯びてきた。

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ほえた。圧で押し切った。3点リードの5回2死二、三塁。田中将が、右腕を力の限りしならせた。「うりゃ!」。叫び声とともに発せられた最速149キロの直球は、狙った内角とは逆の外角へそれた。関係ない。中村奨を平凡な遊ゴロにねじ伏せた。「今日の登板の中では一番力が入りました」。数々の猛者を威嚇した目つきで、オーラで、寄せ付けない。

引き出しを開けまくった。前回からの登板間隔内で手応えをつかんでいた直球の配分を前回の28%から34%に増やした。「特別、何かこの球種がめっちゃいいというボールはなかった。スプリットもきつかった。スライダーも自分の思うようには操れてない」としながら直球を軸に全球種を駆使。2回までに49球を費やし、3者凡退は4回の1度のみ。4度の得点圏も粘った。「常に走者を背負う状況で見ている皆さんにもすごくストレスのかかる状況が続きましたが、無失点で何とか切り抜けられてよかった。なぜ? 己に負けなかったからです」。

心身ともに、完成型に近づいている。中4日から中6日の登板間隔や、チームにフルで同行しない文化の違い。日米のシーズン間の流れに「新たな調整をまたやっている感じ。染みついているまではいってないです」としながら、持ち前の対応力で結果を出しながら適応にいそしむ。未対戦の打者との実戦感覚は乏しくとも「(太田)光のことは頼りにしていますし、基本ベースはそこは任せながら」と捕手を信頼。「各登板内容が違っていろんなものを経験できて、自分にとってはすごく大きな3登板」と収穫は計り知れない。

前人未到の大記録は復帰初戦で止まった。それでも、前を向き続け、新たな連勝街道を歩み始めた。「この間みたいな試合もあれば今日みたいな試合もある。それが野球やと思う。負けないことが大事」。魂の叫びの先に、白星が待っている。【桑原幹久】

▼田中将が今季2勝目を挙げた。これで本拠地の楽天生命パークでは12年8月26日日本ハム戦から16連勝となり、同球場は通算59勝17敗、7割7分6厘の高勝率。同一球場で16連勝以上は10~13年にナゴヤドームで記録した浅尾(中日=16連勝)以来で、パ・リーグでは、70~71年に東京スタジアムで16連勝した成田(ロッテ)以来、50年ぶり。

○…宮城県沖で発生した最大震度5強、マグニチュード6・6の地震で、楽天の本拠地・楽天生命パークも大きな揺れを感じた。試合開始約3時間半前の午前10時27分ごろ、球場のある仙台市は震度5弱を観測。球場内のガラスがばたばたと揺れ、屋外の広告看板も音を鳴らした。楽天ナインも約1分間練習を中断し、地震直後に取材対応に訪れた石井GM兼監督は「大丈夫でしたか?」と報道陣を気づかった。先発の田中将は「球場に向かう前で、アラートが鳴ってかなり揺れましたね」と話した。

▽楽天石井GM兼監督(田中将に) ボールの質はすごくよかった。完全体というところでは伸びしろが含まれている。変化球がもう一段階半ぐらい上がる印象。1カ月休んで復帰したばかりなので、しっかりとコントロールしていきたい。

▽楽天浅村(2回に先制適時打を放ち田中将を援護) (田中将は)後ろから見ていても投球の安定感はさすがだなと思います。打ってあげたいという気持ちがすごくあるので、いい先制点が取れてよかったです。

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