「サニブラウンに勝った男」は、やはり、速かった。日本ハムの“超特急”ドラフト2位五十幡亮汰外野手(22)が9日楽天戦(札幌ドーム)で、天国の母にプロ初安打&初盗塁をささげた。中学時代に、現在の陸上男子100メートル日本記録保持者に勝った俊足の持ち主。前日8日に続いて「1番中堅」で先発フル出場し、1安打2盗塁。チームは敗れたが、規格外のスピードで、本拠地ファンの心をつかんだ。

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すがすがしいくらいに、速かった。五十幡が自慢の快足でスタンドの視線を独占した。5回だ。プロ7打席目で飛び出した初安打は、三塁手の頭を越えて外野の前に落ちる内野安打(記録は遊撃内野安打)。「ラッキーヒットではありましたけど、自分の中では大切な1歩になった」。実直に言葉を紡いだ。

さらに、プロ初出塁後が、真骨頂。続く杉谷の初球に迷わずスタートを切った。相手は、同学年で同じくルーキーの楽天早川で「1球目から走る準備はしていた。手応えはありました」。左投手から難なく二盗を決め、遊ゴロで出塁した7回にも再び二盗。杉谷の右前打で、一気にホームへ生還した。

中学時代までは、陸上部と二足のわらじ。現100メートル日本記録保持者のサニブラウンに勝利した武勇伝は、あまりにも有名だ。この日の試合前、イベントに登場した球団OBの田中賢介スペシャルアドバイザー(SA)は「今まで見た選手の中で断トツに速い」と、そのスピードを絶賛。「あの小さな体で肩も強く、彼が中堅を守ったら左翼がいらなくなるかもしれない」と話したほど、とてつもなく広い守備範囲は一見の価値ありで、相手の進塁を防ぐ抑止力にもなった。

首位討ちへ2試合連続「1番中堅」でスタメン起用した栗山監督は、背番号50の躍動に「あの走塁を見るとワクワクするよね」と目尻を下げ「覚悟していたよね。自分の使命みたいなものを」と評価も、本人は「自分の足を生かすためには、出塁することが大事。出塁率はまだまだ」と課題を見据えている。

この日は母の日。小3の時に病気で亡くなった母に導かれ、陸上ではなく野球選手への夢を選んだ。「天国にいるお母さんに、初ヒットが打てたこと、これからも頑張るよと伝えたい。母の代わりになってくれたおばあちゃんにも、感謝の気持ちを伝えたいです」。記念球は、家族へ。チームは敗れたが「北の超特急」にとって、忘れられない1日になった。【中島宙恵】

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