東大の4番井上慶秀内野手(4年=県長野)の左腕には、ピンク色のリストバンドが輝いていた。「前々から持っていたので。僕だけですね。『いつも、ありがとうございます』ということで」と少し照れながら明かした。母の日に、長野・飯山に住む母への感謝の思いを込めた。

初回、1死一、二塁で中前に先取点を奪う適時打を放った。6回にも中前打を放ち、3安打した開幕戦(早大1回戦)に続くマルチ安打だ。逆転で敗れはしたが、主砲として打線を引っ張った。

東大野球部で野球をやるべく、ちょっと回り道した。96年生まれで、今年で25歳になる。現役で入った同期より3歳、年上だ。現役時は別の国立大を受け、1浪目から東大志望に変えた。2浪目は前期で東大を受けるも不合格。後期で一橋大に受かった。準硬式野球部に入り、キャンパス生活を始めたが「このままでいいのかな」という思いが募っていった。

浪人時、エース宮台を立て、奮闘する東大野球部に憧れた。「東大なら、6大学でプレーできるチャンスがある。文武両道で、もう1度、頑張りたい。東大で野球がやりたい」と再チャレンジを決意。再び机に向かい、東大の、いや、東大野球部の門をたたいた。

100キロ近い巨漢だが、コロナでチーム練習がままならない期間はダイエットに挑戦。3キロ絞り、一塁守備に軽快さを増した。盗塁を試みたこともある。17年秋から63連敗となった。今季は22、23日の法大戦を残すのみだが、次週から有観客となる。「神宮でプレーできるのは幸せなこと。最終カードは、お客さんの前でできることに喜びを感じながら、1球1球、プレーしたいです」と、連敗ストップへ全力を尽くす。【古川真弥】