オリックス山本由伸投手(22)が8回2安打無失点の好投で今季6勝目を挙げた。毎回となる15奪三振で自己最多を更新。7回まで広島打線をパーフェクトに封じ、巨人槙原寛己が94年5月18日広島戦(福岡ドーム)で達成した以来のNPB27年ぶりの完全試合も期待させるマウンドだった。

悔しげな表情から一転、笑顔を垣間見せた。8回、先頭の広島鈴木誠に初安打を浴びた。グラブをたたき唇を噛んだが、気持ちを切り替えて後続を断ち切った。

「ずっと100点を目指しているけど、100点の投球は楽しくないと思う」。今季の開幕直後、真顔で言い切った。「打たれたりする経験があるから、楽しい。真剣にやっているから、そう思う」。純粋に楽しさを求める。だから、進化は止まらない。

優先は自身の記録より、チームの勝利だった。両チーム無安打で迎えた7回に、先頭の吉田正が四球で出塁。続く4番T-岡田が、この試合初となる右安打を放ちチャンスメーク。その後1死満塁から、ラオウこと杉本が中前適時打を放ち、2点を先取。一塁側ベンチ前で8回の登板に備えてキャッチボール中だった山本は、思い切りグラブをたたき、三塁ランナーコーチャーのように右腕をグルグルと回して、最後は両拳を突き上げて喜んだ。

16年ドラフト4位。甲子園出場経験がなければ、アマチュア時代に代表選出されたこともない。そんな高卒5年目右腕は、今でも野球少年だ。

「楽しいと思えるから、いつも成長できるんです」

求める理想が違う。前回登板した6月4日の中日戦(バンテリンドーム)では7回4安打1失点の好投で、今季5勝目をマーク。最速は156キロで、104球を投じて9三振を奪うも「納得いかない部分もあった。これを合格最低ラインぐらいに、調子をあげていきたい」と異次元の目標設定に周囲を驚かせた。

ポツリと“理想の投球”を漏らしたことがある。「打者が打ってから(球種に)気づくようなボールが投げたいんです」。球界最高峰の直球を投じるが、変化球の球速も150キロ以上に設定。150キロを超える高速フォークに、150キロ超えのカットボールを投じ、異次元の速度でキュッと曲げたり、ストンと落とす。

山本の力投で、チームは引き分けを挟んで4連勝。18年7月21日以来、約3年ぶりの貯金生活に突入し、交流戦単独首位。パ・リーグでは3位浮上でAクラス争いにも顔を出した。

爽やかに言い切った山本の表情が、忘れられない。「好きだから、どんなときだって頑張れるんです」。貪欲に突き進む理由は、胸の内にある。【真柴健】