金メダルへのライバルが出そろった。侍ジャパン稲葉篤紀監督(48)が27日、東京五輪最終予選で最後の切符を勝ち取ったドミニカ共和国に警戒心を示した。13年WBCを制し、元メジャー選手を多数擁する実力国。開幕戦となる7月28日の1次リーグ初戦(福島・あづま球場)での対戦が濃厚だ。この日は楽天-ソフトバンク戦(楽天生命パーク)の試合前練習を訪れ、五輪代表の楽天田中将と対面。初戦先発の可能性もある百戦錬磨の右腕にけん引役を託した。

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稲葉監督はほぼ寝ていなかった。いや、寝られなかった。「起きた、というか寝てない。5時くらいに寝た。見始めたら止まらないし、どういう展開になっていくんだろうと」。真夜中の27日午前3時に行われた東京五輪最終予選。ドミニカ共和国がベネズエラを破り、最後の出場枠に滑り込んだ。すでに出場権を得ていた韓国、メキシコ、イスラエルに今月上旬に米大陸予選を突破した米国。金メダルを争うライバルがそろい踏みした。対戦の輪郭が明確に浮かび上がった。

五輪前に現状の世界ランキングが推移しなければ7月28日の開幕戦はドミニカ共和国と対戦する。初の世界一に輝いた13年WBCのようにベストメンバーは組めないまでも、底力はある。「中南米の選手は乗ってくるから、ヒット1本、1点取ったときのあの盛り上がりに圧倒されないようにしないといけない。低めの球を打ったり、粘りもあるし、非常に強いなと」と警戒レベルを上げた。

近年の主要国際大会での対戦は15年プレミア12で4-2。国同士の対戦経験値は多くないが、18・44メートル間でよく知る男がいる。田中将が、メジャー初登板の先頭打者で初被弾を浴びたのが、この日2ランを放ったカブレラ。通算1962安打の強打者をはじめ、中南米勢との対戦経験は豊富だ。

指揮官はこの日、待望していた右腕と対面。日本球界復帰後は初めて顔を合わせた。「北京五輪の話もしたし、この五輪のルールの話。あと選手の話もして、チームを引っ張っていってほしいと」と精神的支柱としての役割を託した。

同31日はメキシコとの対戦が確実。A組1次リーグ2試合を経て変則方式の決勝トーナメントのヤマに振り分けられる。1次リーグ1位通過ならB組1位と中1日で臨める。だが2位以下なら猛暑の中で連戦に。3位でも進展次第でコマを進められるが、7月31日~8月5日まで6連戦となる可能性もあり、8月7日の決勝まで疲弊してしまう恐れがある。

「チームが乗っていけるかいけないかで変わるから、初戦が大事」。初戦の重圧はあるが2戦目まで中2日あるため、中継ぎ陣もフル回転が可能。7月中旬からの仙台合宿前に先発陣に登板構想を伝える構えだ。残り約1カ月の状態も踏まえ、日本随一の経験値を誇る田中将が開幕戦となるドミニカ共和国戦の先発に選ばれる可能性は十分にある。【広重竜太郎】

◆大会方式 1次リーグのグループ分けは6チームが世界ランキングにより、2組に分かれる。現状ランクならA組は世界ランク最上位国の日本(1位)と4番目のメキシコ(5位)、5番目のドミニカ共和国(10位)。B組は2番目の米国(2位)、3番目の韓国(3位)、6番目のイスラエル(18位)が入る。1次リーグから最短5連勝で金メダルに到達する。1次リーグ連敗でも即敗退にはならず、進展次第では5勝3敗でも優勝できる。

<オリンピック野球参加チームの寸評>

◆A組

▽日本(世界ランキング1位) 稲葉監督が掲げるテーマは「スピード&パワー」。侍常連組にメジャー帰りの田中将、ルーキーを含めた初選出組7人が加わった。

▽メキシコ(同5位) エフレン・ナバーロ内野手(35=元阪神)、マット・クラーク内野手(34=元中日)ら元NPB助っ人の活躍でプレミア12で出場権を獲得。日本戦は主要国際大会で未勝利も強化試合は五分五分。

▽ドミニカ共和国(同10位) メジャーで活躍したベテランと長年マイナーでプレーを続けた苦労人、メジャー傘下の若手有望株らが混在する。ベテランは12年にジャイアンツで首位打者争いをしたメルキー・カブレラ外野手(36)、メジャー通算166盗塁のエミリオ・ボニファシオ内野手(36=元ブレーブス)らがメンバー入り。最終予選には出場しなかったが米大陸予選に出場したメジャー通算344本塁打のホセ・バティスタ外野手(40=元ブルージェイズ)が加わる可能性もあり、打線には爆発力がある。メジャー経験豊富で15年に巨人でプレーしたホワン・フランシスコ内野手(34)もいる。投手陣は3Aクラスの若手がそろっている。

◆B組

▽米国(同2位) メジャー11年で通算218本塁打のトッド・フレージャー内野手(35=元メッツ)ら投打ともに実績あるメジャーのベテラン選手が多数。

▽韓国(同3位) 日本の宿命のライバルは主力のメジャー流出で世代交代進む。08年北京五輪で金メダルに導いた金卿文監督が指揮を執り、再現へ。

▽イスラエル(同18位)  欧州予選突破のジャイアントキリングを稲葉監督も生目撃。メジャー通算1999安打のイアン・キンズラー内野手(39=元レンジャーズ)が今大会だけ限定復帰する。

※世界ランキングは27日現在