高校時代は甲子園出場の可能性が「0」だったロッテ和田康士朗外野手(22)が、甲子園で躍動した。

「9番右翼」でスタメン出場し、2回1死二、三塁。阪神伊藤将との左対左の対決でしっかり振り抜き、左翼への先制適時打を放った。連日の適時打にチームも勢いづき、この回一挙6点を挙げた。「去年は左投手を全然打てなかったので、いろいろファームで打席立たせてもらったりしたので、結果が出てきたのかなと」と振り返った。

第3打席でしっかり振り抜いて右前打を放つと、第4打席は当たり損ねながら俊足で内野安打に。9回の第5打席でも痛烈な右前打を放った。前半戦は61試合に出場したが14打席のみ。打ち込みでフォームを固めた。「打席に立てたとしても1打席とかだったので、こうして中断期間で打席に立てるのはありがたいと思います」と話す。

甲子園の土を力強く駆け抜け、二盗も2つ決めた。右翼守備では緑の芝を縦横無尽に駆けた。「人工芝の方が走りやすいですね」と笑いながらも、甲子園の空間を存分に味わった。

道なき道を自力で開いた。中学でケガを機に野球から離れた。進学した埼玉・小川高では陸上部に入部。走り幅跳びに励んだ。しかし、野球部で練習する友人の姿がまぶしい。陸上部を退部し、高2時からクラブチームで本格的に野球を再開した。高校の硬式野球部ではない。甲子園には出場資格さえなかった。「僕からしたら、甲子園は無縁の場所でした」。

前例の少ない道でプロを目指し「心が折れそうになったこともあります」としながら、BCリーグ富山に夢を託した。腕を磨き、抜群の俊足とフルスイングが見初められ、ロッテへ。育成選手での下積みを経て、スピードスターになりつつある今がある。「あの時に野球部を選ばずに、クラブチームを選んだことで、今ここに来てプレーできていると思うので」。切り開いた道に胸を張る。

昨季は23盗塁、今季は前半戦で17盗塁。井口資仁監督(46)も「調子が上がれば、マーティンがDHの時のライトも含めて、というのも考えているので」と、後半戦の起用イメージを膨らませる。和田も「とにかく塁に出て走ることが僕の仕事なので。盗塁の数を伸ばすにはスタメンで出ることが一番なので」と燃え、夏を駆け抜ける。【金子真仁】