阪神の佐藤輝明内野手(22)がプロ初の2打席連発で69年に田淵幸一がマークした球団新人最多記録の22本塁打に並んだ。DeNA戦(東京ドーム)でともに浜口から3回と6回に21、22号ソロ。1リーグ時代の46年に「青バット」の大下弘(セネタース)が記録した新人左打者の歴代最多も2本更新した。初回の先制打と合わせて猛打賞でチームの3連勝に大きく貢献した。

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真夏の“怪弾”だ。佐藤輝が内角球に反応した。3回1死。追い込まれてから浜口の141キロ直球に左肘をたたみ、右脇を大きく開けて体を回転させた。右翼席中段に着弾する21号ソロに納得顔だ。

「あそこを攻められるのは分かっていますし、なんとか粘って、厳しいコースだったんですけど、しっかり肘を抜いて打つことができました」

後半戦初アーチは、唯一1発のなかった東京ドームでの「セ全本拠地制覇弾」。46年大下弘の20本を抜き新人左打者単独トップに立つと、ノンストップで快音を響かせた。同点の6回先頭。またも浜口の内角直球を、今度は左中間へ持っていった。

「逆方向にホームランが出る時は良い時。とても良い状態だと思う」

球団新人最多、69年田淵幸一にあっさりと並んだ。決勝の22号ソロ。通算474本塁打のレジェンドにリスペクトを込めて偉大な記録をかみしめた。

「すごいホームランバッターっていうのはもちろん知っています。田淵さんという偉大な方の記録に並ぶことができたことはすごく光栄ですし、素直にうれしいです」

5番打者として、ライバルたちを震え上がらせる怪物にも“弱点”がある。近大時代の夏。野球部の寮仲間は、テレビで怪談話を見て盛り上がっていた。佐藤輝は1人、蚊帳の外…。

「大丈夫じゃないです。絶対見ない。得することがないので…」

187センチ、94キロの大男が体を縮こまらせ、真顔で首を横に振る。「それで夜トイレ行くの怖くなったら嫌なんで」。打席では見せない弱気な表情もまた、22歳の素顔だ。

そんなルーキーは、初回にも右翼フェンス直撃の先制適時打を放った。DeNA投手陣を青ざめさせる3安打3打点で3連勝に導いた。矢野監督も「1本目がすごくうまく打てたなと。大先輩の記録に並んだっていうのもすごい。最初のタイムリーもそうやし、今日は中身の濃いホームランだった」と手放しでたたえた。2位巨人が敗れてゲーム差は2に拡大。阪神が宿敵のいない東京ドームでさらに引き離す。【中野椋】

 

◇ 新人左打者の22本塁打は46年大下(セネタース)の20本を抜く新記録で、阪神で新人の22本は69年田淵に並ぶ球団タイ記録。1試合2本以上のマルチ本塁打は、3本打った5月28日西武戦以来2度目で、2打席連発は初めて。阪神の新人で2打席連発は48年10月16日別当、69年4月13日、同年10月16日田淵、14年7月1日梅野に次いで4人、5度目となり、2度のマルチ本塁打は田淵以来2人目の球団タイ記録。