世話になった“師匠”菅野に投げ勝ち、古巣を倒した。昨季限りで巨人を戦力外となり、今季からDeNAに加入した宮国椋丞投手(29)が巨人16回戦(横浜)で移籍後初登板初先発。17年7月12日ヤクルト戦以来1518日ぶりの勝利投手となった。

初回に2失点も粘りの投球。5回に味方打線が一挙7得点で逆転、白星をつかんだ。負ければ自力CS消滅の可能性もあったが、好投で危機を救った。

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いきなり宮国はDeNAファンのハートをつかんだ。お立ち台で「宮国と申します。今日は(試合後にイベントがある)スターナイトということで、初戦が僕でいいのかなと思っていたけど、粘りの投球ができて良かった。ありがとうございました」と謙虚に語った。今季チームが3勝しかしていなかった古巣巨人相手に初登板勝利。「意識しないと言ったらうそになるんですけど、チームのために腕を振りました」。すっかり「ハマの宮国」になった。

初回に3安打で2失点したが、慌てなかった。「粘り強く投げてたら、野手の方が打ってくれる。投げられる喜びやマウンドに立てる喜びをかみしめながら1球1球投げてました」。最速147キロの直球で内角を突きながら、スライダー、シュートを低めに集めた。3回、打席に菅野を迎えた。14年からハワイで自主トレをともにし、食事会での振る舞いなど私生活から野球の技まで教わった“師匠”。「試合中だったので、そこまであいさつできなかったですが、会釈ぐらいした。いい打者でした」。2安打を浴びて苦笑いした。

昨季限りで選手として戦力外通告を受けたが、実は巨人にスタッフとして残るオファーもあった。だが、現役続行を選択。4年前に亡くなった父透さんの「投げられるんだったら1年でも長く野球を続けなさい」という言葉が脳裏にあった。12球団合同トライアウトを受験も、右肩を痛めており最速は140キロ。NPBのオファーはなく無所属になった。1月に西武内海とのトレーニングを終えた後は、保田トレーナーと2人で公園などを転々としながら先の見えない練習。DeNAのテストを受けて育成契約で入団したのは、キャンプ終了後の3月だった。

ようやく2軍で調子が上がってきたのは6月に入ってから。科学的な分析結果を見て「直球とフォーク」から「両サイドを丁寧に突く」スタイルに変え、追求した。2軍での最終テストは8月28日の巨人戦。6回無失点で登録期限ぎりぎりの同30日に支配下に昇格となった。古巣相手の勝利は「(プロ初勝利とは)また違ったうれしさ、感情があります。今回は周りの方々への感謝を持って、少しでも恩返しと。大変うれしく思う」。ウイニングボールは「おやじには見せようと思います」。墓前に報告する。【斎藤直樹】

◆宮国椋丞(みやぐに・りょうすけ)1992年(平4)4月17日生まれ、沖縄県出身。糸満高では2年春からエース。10年ドラフト2位で巨人入団。12年4月8日阪神戦でプロ初登板初勝利。13年はWBC出場の内海に代わり開幕投手を務めた。昨年11月に戦力外となり巨人を退団。今年3月にDeNAが育成枠で契約。8月30日に支配下選手登録された。186センチ、88キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸840万円。

▽保田貴史氏(スタンドで観戦し) ほんまにうれしいですし、あの時を思えば信じられへん気持ちです。自主キャンプの時は、白いズボンに上着はアディダスのシャツを着て、ブルペンで投げていたので、青いDeNAのユニホームを着て、マウンドに立ってる姿に感動しましたし、涙が出そうでした。本当に感謝ですね。同じ2021年の話とは思えないです。