ベールに包まれた剛腕が快速球を連発した。プロ注目右腕の関西国際大・翁田(おうた)大勢投手(4年=西脇工)が自己最速を1キロ更新する153キロをマークした。7回から救援登板。先頭に150キロ超の速球で空振り三振を奪うとギア全開だ。次打者の初球に152キロ速球でストライク。3球目を左前にはじき返されたが153キロを計測した。2死一、二塁になったが、スライダーで中飛に抑えて1イニングを無失点だった。

序盤に逆転される展開だった。「士気を高めて、自分の投球で流れを持ってこようと思った。四球を出したのは反省です。真っすぐは自分の理想に近い球になってきている。変化球がもう少しダメでした」。春季リーグの5月12日大体大戦は連続四球などで、1死も奪えず、4失点降板。右肘痛を訴え、翌13日に右肘の疲労骨折が発覚した。7月から投球を開始。コロナ禍で8月下旬から2週間、練習できなかったが約4カ月ぶりの公式戦で快投した。

鈴木英之監督(54)は「試運転なので、まだまだです。仕上がっていない」と話す。本格練習再開からまだ3日。調整の途中でも同校のスピードガンで150キロ台を立て続けに出した。指揮官は「(仕上がれば)150キロ中盤くらいの球を放れるポテンシャルがあります。160キロ近くの球を投げるかもしれない」と潜在能力の高さを評価した。

今秋のドラフト候補だがプロのスカウトの目に触れる機会は限られている。同リーグは春の公式戦期間中から新型コロナウイルス感染拡大にともなう緊急事態宣言発出後、球場でスカウトが視察できず、秋季リーグでも同じ措置が続く。翁田も「仕方ないです」と話すがマウンドで全力投球を怠らない。プロ志望届も提出し「自分が投げて勝てる投手になりたい」と話した。

8月下旬に2度、練習試合で登板し、スカウトが大挙して視察した。評価は上々だ。あるスカウトは「いい真っすぐを投げていた。球の強さは屈指だと思う」と話せば、別のスカウトも「短いイニングなら1軍でも通用する」とうなずく。この日の速球は重さもキレも兼ね備え、目を見張るような球威だった。ボールの回転数を測定する機器で計測し、速球は2500回転を超えるという。ドラフト会議まで1カ月。今年はほとんど露出がなかった大学球界の剛腕が、ドラフト戦線の上位に急浮上しそうな情勢だ。【酒井俊作】