広島西川龍馬外野手(26)が天敵から意地の1発を放ち、ノーヒットノーランを阻止した。阪神戦に「3番左翼」で先発出場。7回2死まで無安打に抑えられていた秋山から、2年ぶりの2桁本塁打となる右越えの10号ソロで一矢報いた。秋山と今季7度の対決で1度しか勝てず、5敗目。阪神2連戦は連敗で終わったが、西川の復調は、今後の明るい材料だ。

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西川が得意の悪球を、一振りでたたきつぶした。7回2死まで無安打に封じられていた天敵の阪神秋山を相手に迎えた第3打席。カウント1-1からの3球目、内角高めのボール球のカットボールを強引に引っ張り、右翼席までかっ飛ばした。「ノーヒットだったので何とかしようと上からぶったたきました」。この日チーム初ヒットとなる意地の1発で、屈辱のノーヒットノーランを阻止した。

朝山打撃コーチが「不思議なストレート」と表現する秋山の直球に、打線が沈黙した。同コーチは右腕の最速130キロ台後半の直球について「スピンが効いてる時もあるし、効かずに沈むこともある」と説明。西川も「確かに不思議。(スピード)ガン以上に感じるのか、キレって言うんか。あとはコントロールですかね」と分析した。「1打席目からなんとなく打てそうで、打てなかった。もうちょっと早めに捉えとけばよかった」と振り返った。

前半戦は打率を2割台前半まで落とすなど、苦戦を強いられた。「割り切りですかね。シンプルに振って合わせるだけ」と切り替え、打率を2割7分4厘まで戻した。プロ入り後から使い続けてきた形のバットから、東京五輪による中断期間に新調。従来のものより1・5センチ長い、ナショナルズのフアン・ソト外野手(22)モデルの86・5センチのものに切り替えた。不振から抜け出すためにあらゆる方法を模索し、復調につなげてきた。

この1発で、16発を放った19年以来2年ぶりの2桁に到達した。西川は「最低限2桁打てたのはとりあえず。あとは率が上がってくれば」と引き締めた。9月に入り3番に定着しつつある。「誠也が後ろにいるので、絶対的に僕を全力で抑えてくると思う。誠也の後ろも坂倉がおるし、なんとか僕がエラーでも四球でもとりあえず塁に出れば、点が入る確率は高くなる」と力を込めた。「3番」の役割を全うし、チームをもり立てる。【古財稜明】

▽広島佐々岡監督(西川の1発について)「主力として期待していた打者なので。5番も大事だけど、誠也につなぐ3番として(の役割は大きい)」