創部4年目の北海道ガスが日本製鉄室蘭シャークスを9-8で下し、リーグ戦3戦全勝で初の本大会出場を果たした。タイブレークとなった延長13回1死満塁、1番米満凪遊撃手(24=奈良学園大)が左翼線にサヨナラ打を放ち勝負を決めた。初の全国切符をつかんだ6月の日本選手権は初戦敗退。悔しさを晴らすべく、本大会(11月28日開幕、東京ドーム)に臨む。

北海道ガスの米満が食らい付いた。タイブレークの延長13回、同点に追いつきなお1死満塁のチャンスで打席が回った。日没が近づきグラウンドは見る見るうちに暗くなる。ボールはほとんど見えない。「正直あんまり見えなくて…。多分インコースのストレートかな。普段は足を浮かせてタイミングを取るんですけど、ノーステップにして、とりあえずバットに当てようと思った」。振り抜いた打球は左翼線で弾んだ。初のドーム切符。駆け寄ってきたチームメートと抱き合って目を潤ませた。

4時間27分の激闘だった。先制されるも逆転し、一時は4点差をつけた。9回2死から相手の3番永森に同点2ランを許し延長へ。13回に1点を勝ち越されたが、最後まで諦めなかった。中林健吾主将(25=早大)は「勝てば本大会出場が決まる試合。こんな緊張感でタイブレークを戦うことはなかなかない。これからに向けていい経験になった」と振り返った。

チームは6月に初めて日本選手権本大会に出場したが、初戦で東邦ガス(愛知)に1-2と惜しくも敗れた。中林は「レベルが高い相手とできて、練習から自分がやらなければいけないことが明確になった」という。選手たちが自主的に行うミーティングの頻度を増やすなど、1人1人が意識を高めあった。

清水隆一監督(62)は胸を躍らせている。92年熊谷組の監督に就任した年に都市対抗本大会で準優勝した。北海道ガスの監督就任1年目で臨む大舞台に「まずは1勝。私自身は忘れ物を取りにいきたいなと思っています」。今年の本大会は東京オリンピック(五輪)などを考慮して、通常の7月開催から時期を11月開幕に移動した。米満は「気負いせずに伸び伸びとやりたい」と気持ちを高めた。【山崎純一】

◆北海道ガス 18年4月、バルセロナ五輪銅メダルメンバー小島啓民監督を迎え発足。同年11月に札幌市内に室内練習場が完成した。19年5月に都市対抗道予選に初参戦し1次予選で敗退、昨年は2次予選に進出するもリーグ戦1勝2敗で本大会出場はならなかった。今年2月に元熊谷組の清水隆一監督が就任。6月の日本選手権道予選を制し、創部4年目で初の全国大会出場を決めた。本大会は1回戦で東邦ガス(愛知)に1-2で惜敗した。

◆表彰選手 ▽最優秀選手賞(砂沢賞)米満凪(北海道ガス)▽殊勲選手賞(水谷賞)寺田和史(北海道ガス)▽敢闘選手賞(森賞)永森竜次(日本製鉄室蘭シャークス)▽首位打者賞 寺田▽若獅子賞(新人賞)該当者なし▽敢闘賞 岩田龍二(小樽協会)