阪神佐藤輝明内野手(22)が、14日ぶりの1軍戦で後数十センチで本塁打というドデカい打球をぶちかました。中日戦に「7番右翼」で昇格即先発し、4回に右翼ポール際に大飛球。ダイヤモンドを1周したが、リプレー検証でファウルと判定され“幻弾”に。貧打にあえぐチームの起爆剤の復帰初戦は4打数無安打に終わった。試合は守護神スアレスが9回に追い付かれて引き分け。24日からの巨人3連戦(東京ドーム)で本物の復活アーチを見せてくれ!

    ◇    ◇    ◇

リプレーシーンが流れる約2分30秒、ドキドキして待った。三塁側ベンチの佐藤輝は時折、大型ビジョンを指さして野球少年のような笑顔になった。三塁側の虎党が沸いた後、右翼ポール右に打球の通過を確認した一塁側の中日ファンが沸く。簡単に判別できないほど紙一重だった。

4回1死一塁だ。左腕笠原から右翼ポール際に“本塁打”を放ち、ゆっくり一塁ベースを回った。そこで1度、不思議そうな顔で自軍の三塁ベンチを見た。ファウルかな-。予感があったのかもしれないが、ベンチ前ではノリノリで「Zポーズ」。その後、審判団によるリプレー検証でファウルに覆ると苦笑い。仕切り直した打席は一ゴロに倒れた。

「結果が出ていないのでなんとも言えないですけど、いい当たりも出た」。4打数無安打で、連続打席無安打は「39」と自己ワーストを更新した。2三振を加えて、10年ブラゼルに並ぶ球団歴代2位の153三振。13日間の2軍生活で試行錯誤した成果がすぐに出なくても、怪物ルーキーの弾道は復活を予感させた。

試合前には井上ヘッドコーチに促され、ナインの前で「フレッシュな僕が入ったことで、チームの流れを変えられるように頑張ります」とおちゃめに決意表明した。「カメラ用意いいですか?」と先輩たちにいじられ、また笑顔。「先輩たちもやりやすい環境をつくってくれているので、結果で応えたい」。試合後は本音がこぼれた。

矢野監督も「『ムード変える』って試合前の円陣で言ってたんで、そういうピースになってくれたら」と期待は変わらない。同時に「プロである以上、結果が求められていく世界。そこがあってのこと」と付け加え、次は快音でムードを変えることを願った。

9回は守護神スアレスが2点リードを守れず引き分け。佐藤輝の打球が数十センチずれていれば…。そんな思いを24日からの巨人戦にぶつける。今季打率4割と球場別トップの東京ドームで、本物の1発に期待がかかる。「負けられない戦いだと思うので、少しでもチームのために、自分のできることをやっていきたいと思います」。完全復活へ、ベストを尽くす。【中野椋】

▼佐藤輝の8月22日中日戦第1打席から始まった連続打席無安打は39に伸びた。2リーグ分立後の球団野手最長は、植田海が昨年8月7日広島戦第3打席から11月11日DeNA戦第1打席まで記録した40打席。佐藤輝はあと1と迫ってしまった。

▼佐藤輝は東京ドーム9試合(巨人戦6試合、DeNA戦3試合)で、球場別最高の打率4割と相性がいい。9試合中マルチ安打が過半数の5試合あり、うち3安打の猛打賞が2度。無安打は2試合しかない。全14安打中二塁打4、本塁打3でちょうど半分が長打。長打率7割7分1厘はセ本拠地球場別最高で、持ち味の長打力発揮を期待できそうだ。

▽阪神井上ヘッドコーチ(佐藤輝に)「輝明に言っとってん。『なんで、あの30センチ、50センチ、もうちょっとこっちに行かへんの』って。楽しみな素材を一生懸命見つけて、ポジティブな雰囲気を前面に出していくしかない。東京ドームって狭い球場だから、そこでバカーンって行くようなのがあったら、波に乗れることを期待して頑張るしかない。期待は十二分にしてます」

阪神ニュース一覧はこちら―>