仙台6大学野球秋季リーグ戦が今日25日に開幕する。今秋のドラフト候補で仙台大の好打者・川村友斗外野手(4年=北海)が、無我の境地で大学ラストシーズンに挑む。今春リーグ戦は打率2割4分1厘と低迷。チームも4季連続で涙の準優勝に終わった。スラッガー本能を呼び覚まし、17年秋以来のリーグ制覇の一翼を担う。

ラストシーズンに向け、川村が静かに闘志を燃やし、決意を口にした。

「まずは勝ちたいなと。チームのことを思いながらリーグ優勝に貢献したい」

「最後のチャンス」で、雪辱を果たす。最大の宿敵、東北福祉大は18年春から6季連続で優勝を果たし、リーグを席巻している。一方、仙台大は4季連続準優勝にとどまる。2年秋から主力として活躍する川村は、歓喜の瞬間をベンチから見届けていた。負けられない思いは人一倍強いが、あえて平常心を貫く。「いつも通りに。練習でつめてきたことを発揮する」と淡々とした表情で、言葉に力を込めた。

アーチストの本能を呼び覚ます。今春のリーグ戦は全8試合に出場も、29打数7安打で打率2割4分1厘、2本塁打と不振に終わった。川村はこう振り返る。「4年生になってドラフトの年で、自分の中では意識していなかったけど、無意識にそういう気持ちがあったと思う。全体的に結果を残すことができず、悔しいシーズンだった」。

2年秋には打撃タイトル2冠(最高打率、最多打点)に輝き、昨秋も2冠(最多打点、最多本塁打)を獲得した左の好打者は、巻き返しの秋を誓う。「技術的なことは変えないで、無意識で臨みたい」。邪念を振り払い、フラットな状態で1球1球に神経を研ぎ澄ます。

夢だったプロ入りが現実味を帯びている。「夢とかではなく、2年秋に結果を残すことができて、目指せる距離になった」と話す。大安吉日の16日、プロ志望届を提出。走攻守3拍子がそろい、力強いスイングで逆方向にも長打力を発揮できるのが持ち味だ。

プロの扉を切り開く打撃のルーツは、少年時代にあるという。地元、北海道・松前町は冬は雪に覆われる。父博さん(51)との打撃練習が日課だった。野球のボールサイズに作られた雪玉を投げてもらい、打ち返す。地の利を生かした独自の練習方法だ。川村は「父が仕事で帰ってくるまでに、雪玉を作って、帰ってきたら『作ったから投げてよ』って言ってましたね。大学になっても、年に1度帰省した時には、弟も一緒に雪を打っています。親子のコミュニケーションみたいな感じです」と笑う。

ラストシーズンを17年秋以来のリーグ制覇で飾り、満を持してプロの世界に飛び込む。【佐藤究】