第51回NHK上方漫才コンテストで優勝したお笑いコンビ「ビスケットブラザーズ」のきん(30)が、幼なじみの阪神秋山拓巳投手(30)との友情物語をしゃべり倒した。小学1年で出会った「たっくん」と17年ぶりに再会して意気投合。交友を深めている。同級生だから知る素顔や過去のエピソードから、逆転優勝を目指す秋山へのエールまで熱っぽかった。【取材・構成=三宅ひとみ】

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伝統ある大会で頂点に立ったビスケットブラザーズのきんにとって、秋山は「いい人過ぎるって!」と突っ込みたくなるほど気さくだという。2人の共通点は香川・丸亀市の城坤(じょうこん)小で「同じ野球チーム」と「約2カ月同じクラスメート」だけ。小3の5月に秋山は愛媛に引っ越していった。時が過ぎ、坂出高を卒業したきんは大阪でお笑い芸人に。愛媛・西条高から阪神に進んで活躍する秋山をテレビ越しに見ていた。「仲良かった期間も短いし、幼なじみというのも恥ずかしい。覚えられていないと思った」。

止まっていた2人の時間が突然動きだしたのは17年のこと。共通の知人が取り合ってくれ、秋山の誘いで2人で食事に行くことに。「プロ野球選手になって変わっているのかな」。きんの緊張と不安は無用の心配だった。「びっくりするくらい変わらなかった。(良い意味で)プロ野球選手っぽく振る舞わないというか、何ひとつ偉そうじゃなかった。身なりはすごくかっこよかった(笑い)」。小3以来とは思えないほど、初恋の話や「あいつ今なにしてる?」など話題が絶えず、互いに童心に帰った。秋山の気さくな性格のおかげで再び友情がかよった。

出会いは約22年前。きんが小1の終わりに入団した「今津スポーツ少年団」。秋山は小2で身長が約150センチと全国平均の約128センチをずいぶん上回っていた。「当時の体感は180センチ以上ありました。野球も突出してましたし、遠投などの記録を全部塗り替えていた」。秋山が小2で投げた55メートルは今も同少年団の学年別の最長記録。きんは29・2メートルだった。距離が縮まったのは小3。一緒のクラスになり、きんと秋山ともう1人が国語の授業でふざけて音読し、爆笑をさらった。「僕の中では爆笑だったんですけど、たっくん(秋山)は覚えてなかった(笑い)」。

インパクト十分な珍事件もあった。体育の授業で、補助板を使って逆上がりをする際、秋山は高身長があだになって補助板に頭を「ごりごりごり~」とぶつけて傷だらけになった。聞いたことのないけがの仕方で保健室行きに。「規格外でした。背の順は一番後ろでしたし、ランドセルを背負う姿にも違和感がありました」。同じクラスになって2カ月で秋山は引っ越してしまったが、きんの中には色濃く思い出が残っている。

大人になって深まった交友では、常にお笑い芸人をリスペクトしてくれるという。きんがテレビでコントや漫才を披露した日には必ず連絡が届く。褒めてくれ、「ここの部分ミスってたやろ」と審査員並みの鋭い指摘が入ることも。後輩芸人を含めた食事の席にも快く顔を出し、年下に対しても敬語で低姿勢で接するという。「本当に丁寧に話してくれますし、焼き肉もずっと焼いてくれます」と人柄の良さを熱弁した。

きんは、そんな秋山を巻き込んでシーズンオフに「トリオ結成」ができないか勝手に画策している。「ビスブラ×たっくん」のコラボだ。「3人でコントできたらおもろいですね~! (もう自分は)野球を頑張ることが出来ないから、たっくんがお笑いを頑張ってもらうしかないですね」。得意分野は上方漫才コンテストでもみせたコント。人柄もイメージしながら「たっくんと女装したいですね」とネタも練っている。

阪神はシーズン最終盤を戦い、秋山は先発で懸命に腕を振ってここまで10勝を挙げる。お笑いで優勝したきんは「たっくんが活躍したら僕のところにも『すごいな』と連絡が届く。(優勝まで)いききってほしい」と語り、幼なじみが逆転Vで続いてくれることを願っている。

◆情報 ビスケットブラザーズのきんは29日午後8時15分開演のオンライン配信「ララバイ」に出演する。また来年1月14日にはルミネtheよしもと(東京・新宿)でビスケットブラザーズ単独ライブを予定している。詳細は後日、各劇場のホームページで発表。

◆ビスケットブラザーズ 香川出身のきん(遠山将吾、30)と大阪出身の原田泰雅(たいが、29)による男性コンビ。ともにNSC(吉本総合芸能学院)大阪校33期で、同期には霜降り明星やコロコロチキチキペッパーズら。19年にキングオブコント決勝進出。20年の第9回ytv漫才新人賞決定戦で優勝。今年のNHK上方漫才コンテストでは2本ともコントで勝負し、優勝した。目標はキングオブコント優勝。