阪神青柳晃洋投手(27)が投打の大奮闘で、リーグ単独トップの13勝目を手にした。「負けていい試合なんか1試合もない。絶対勝つ! って気持ちでマウンドに上がりました」。マウンドだけでなく、打席でも主役になった。

6-0の5回2死一、二塁。ヤクルト大下のスライダーを捉えた打球は、前進守備の中堅手の頭上を大きく越えた。「投げるだけじゃなく、他でも貢献できたらといつも思っているので最高の形になった」。思わぬ? 2点適時二塁打に、矢野監督もナインも満面の笑み。続く島田が中前打を放つと、今度は激走で一気にホームを踏んだ。

本業では7回3安打無失点の快投。初回にいきなり1死満塁のピンチを招いたが、サンタナを144キロツーシームで遊ゴロ併殺。打たせて取るスタイルがさえた。降雨で4回裏に一時中断しても、「雨柳さん」と呼ばれるほどの雨男は動じない。魅力を存分に発揮した夜だった。

かつては青柳も、伝説の剛腕を夢見る小学生だった。「僕、松坂さんに憧れていたので。上から速いボールを投げたいという気持ちはすごくあった」。当時のコーチの助言でサイドスローに転向したが、憧れは強く、中学1年でオーバースローに再挑戦して右肘を負傷したこともある。偶然にも西武松坂の引退試合と同じ日に登板。「松坂さんと比べたら活躍なんて言えるほどじゃないですけど、プロ野球という同じ舞台に立てたことは素晴らしいこと。これからも頑張っていきたい」。思いを封印し、貫いたスタイルは、今では唯一無二の存在だ。

目標だった「13勝」には強い決意を込めていた。「最初は10勝にしたかったけど、10勝だと9勝しても満足してしまいそうだった。2年くらい言い続けたけど、10勝したのが今年初めてだったので、なんとか達成できて良かった」。最多勝とともに勝率もリーグトップ。逆転Vも自身初のタイトルも、どちらも全力でつかみにいく。【磯綾乃】

▽阪神矢野監督 雨は青柳の時はよく降るんで。本人も逆にそれをプラスに捉えて、しっかり粘った投球をしてくれた。いろんな思いを持って今日登板した中で、結果をしっかりつけてきたのは青柳の成長。ましてや最多勝、本人も13勝をずっと目標にしていた数字なんで、もう1個なんとかいってもらいたい。

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