社会人出身ルーキーの強心臓が頼もしかった。阪神伊藤将司投手(25)が、逆転優勝への重圧かかる中、5回2/3を1失点で10勝目を挙げた。

「優勝するのにあと1歩。そういう中で自分の投球スタイルを崩さず投げることを意識した」と力まずツーシーム、カットボールと球を動かした。

初回、先頭宇草にいきなり安打を許したが、動揺することなく2番小園を追い込んで低め140キロ直球で遊ゴロ併殺に仕留めた。失点は2回の坂倉ソロの1点のみ。首位打者と本塁打王を争う4番鈴木誠には3打数無安打と仕事をさせなかった。2点リードの6回2死二塁、90球で坂倉を迎えたところで降板となったが、矢野監督は「絶対に勝たなあかんという状況の中で、アイツは動じないで投げてくれた。申し分ないというところで代えた」と気持ちの強さを絶賛した。

チームでは青柳、秋山に続く今季3人目の2桁到達。球団の新人では13年藤浪以来9人目、左腕では67年江夏以来3人目となった。1年目から先発ローテーションを守って10勝7敗と貯金3つをつくった。140回1/3で規定投球回数にあと2回2/3足らないが、防御率2・44はトップ中日柳の2・20に続く“隠れ2位”の活躍だ。昨年12月の入団会見から「目標は2桁」と掲げ、有言実行に「実際に結果で残ってよかった」と笑った。

「社会人時代も一発勝負でやっていたので」とJR東日本時代の経験がプロでも大一番で生きた。横浜高時代には渡辺元智監督(76)から「体に隠して投げろよ」と指導され、グラブを持つ右手を高く上げ、リリースが見えにくいフォームをここまで継続してきた。2月のキャンプでは藤浪らの剛球を見て驚いたが「自分のプレースタイルを貫いて」と、自分を見失わなかった。この日の最速も143キロ。剛球でなくても、味のある投球で16年ぶりのリーグ優勝への望みを大きくつなげた。【石橋隆雄】

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