東京五輪日本代表監督として、侍ジャパンを金メダルに導いた日本ハムOBの稲葉篤紀氏(49)が27日、新たに球団のゼネラルマネジャー(GM、49)に就任し、本拠地の札幌ドームで記者会見に臨んだ。球団のスポーツ・コミュニティ・オフィサー(SCO)職と兼務。吉村浩前GM兼チーム統轄本部長(57)は、統轄本部長専任となる。「現場に近いGM」として、新監督に内定している新庄剛志氏(49)と常勝復活を目指す。

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侍ジャパン監督の役割にはGMの側面もある。極端に言えば、800人を超えるNPBの支配下登録選手が代表候補となる。稲葉氏は代表監督在任の約4年間で選手の現状の能力を観察し、その先にある成長力も想像しながら、東京五輪で最適解の24人を選出した。

コロナ禍による五輪延期前は不調時の対応の経験値が少ないルーキーの選出には慎重だった。だが今年は柔軟な姿勢で広島栗林を選んだ。守護神として全戦に登板し、2勝3セーブと金メダルの立役者。追加招集されたラストサムライの新人、日本ハム伊藤も強心臓で欠かせないピースになった。

五輪には選出されなかったがソフトバンク周東は育成選手の時から着目し、19年プレミア12ではサプライズ選出。「スペシャリスト」は初の世界一に輝いた同大会のキーワードになった。視察時には無名の若手を列挙することもあった。昨春に期待したヤクルト塩見は今季1番打者としてブレークした。

選考時やオーダー作りには周囲の声に耳を傾け「聞く力」には定評がある。意見を集約して悩みすぎるほどだが、最終的には腹をくくって決断してきた。もちろん選考が主を占める代表監督と、限られた予算の中でマネジメントする球団のGMは異なる。代表監督からのGM転身は前例がない。稲葉氏の金メダルの先にある挑戦が続く。【東京五輪・侍ジャパン担当 広重竜太郎】