日本ハム新庄剛志新監督が発表された。勝負強い打撃とレベルの高い外野守備、そして派手なパフォーマンスでもファンを魅了した同氏が、指揮官としてどういう野球、チームづくりを展開するのか。「新庄baseball」と題し探る。第1回は3年間ともに戦った森本稀哲氏(40)に聞いた。

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話の流れは覚えていない。どこで聞いたのかも定かではない。ただ言葉だけは、森本氏の記憶にはっきりと刻まれている。「もし自分が監督だったら、調子がいい順に1番から並べるのにな」。球宴での本盗や敬遠球打ち、ドームの天井から降臨するパフォーマンスなど、奇想天外なプレーや言動が注目を集める新庄氏が、かつて先発オーダーについてした発言。森本氏は「本当に実現するのかな。楽しみです」と笑った。

サヨナラ満塁シングルヒット(柵越えも前走者と抱き合い単打)など、ここ一番の勝負強い打撃が印象的だが、森本氏は「打撃は派手だけど、守備は確実で、堅実。知的で戦略的でした」と振り返る。相手打者のデータだけではなく、好不調なども頭にインプットし、1球ごとに1歩単位で守備位置を変える。球場を離れると「野球の話は禁止」だったが「交流戦の前になると部屋で巨人戦とか見てましたね」と、情報収集は欠かさなかった。森本氏は「守備の意識はすごく高い。いま日本ハムが一番苦しんでいる守備の立て直しに、まずは着手するのでは」とにらんでいる。

選手のグラウンド外の行動も大きく変わりそうだ。「子供たちが憧れるかっこいいプロ野球選手でいなければいけない」とは、森本氏が何度も聞いた新庄氏の言葉。服装からメディア対応、あいさつや食事のマナーなど、厳しく怒られたことは数え切れない。「もっと大きな声であいさつして帰りなさいとか、ひじをついてご飯を食べるな…とか」。そして人の悪口は聞いたことがない。「だから“運”がいいんでしょうね」。表向きのキャラクターとは裏腹に、チームづくりは人間教育にも及ぶだろう。

森本氏が「紛れもなくスーパースター」と称する新監督。選手よりも注目を集めてしまいそうだが、同氏は違う視点に立つ。根拠は、自身が球宴で行ったドラゴンボール・ピッコロの変装だ。「(球宴)初出場ですよ。こっちは震えてたのに、新庄さんが『やれ』って」。結果的に、森本氏の知名度は飛躍的に上がり、その後の野球人生は変わった。「選手より新庄さんが目立っちゃうとは感じない。きっと選手を巻き込んでいくと思う。若い子たちの眠っている才能が開花していくかも」と期待する。

新庄氏が現役時に大事にしていたのが切り替え。森本氏は「打てなくてがっかりしている選手に率先して『気にするな』って声をかけ、のびのびやらせる監督になるでしょうね」。派手な攻撃と緻密な守備、そして明るいベンチ。新庄野球は、想像しただけで楽しくなる。【本間翼】