オリックスが「SMBC日本シリーズ2021」第3戦で痛恨の逆転負けを食らい、ヤクルトに2連敗した。 だが、2点を追う6回には本塁打王の杉本裕太郎外野手(30)がシリーズ初アーチとなる一時同点の2ラン。7回には首位打者の吉田正尚外野手(28)が一時勝ち越しの2打席連続二塁打を放つなど、3、4番の奮起で勝利への夢を見させた。この敗戦で、オリックスが日本一の場合は神戸での胴上げとなった。まずは第4戦に勝って、土俵中央に押し戻したい。

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ラオウ杉本が日本中のオリックスファンと、右拳を突き上げた。2点を追う6回無死二塁。獲物は甘く入った小川の147キロ真っすぐ。日本シリーズ初アーチとなる一時同点2ランを右翼席にたたき込んだ。

「少し詰まっていたので、まさか入るとは思わなかった」

今季32発を放ち、自身初の本塁打王を獲得。おなじみのベンチ前で右拳を突き上げる「昇天ポーズ」を日本シリーズでも初披露した。球宴やクライマックスシリーズでも一撃を放ち、“ラオウ”の知名度は急上昇中。「最近ようやく認知されてきた。球場のファン、テレビ画面越しのファンに届くように、大事な場面で打てたら」と臨んだ日本シリーズでも、東京ドームを熱狂させた。

打席で構えるとき、ふと両肩の力を抜いた。「力を抜くことだけを考えて打席に。東京ドームは打球が上がれば勝手に(スタンドに)入る可能性があるので」。言葉通りコンパクトに振り抜き、着弾させた狙いは確かだった。試合前のフリー打撃でも右方向を意識。右翼ポール直撃弾を放つなど、予行演習もばっちりだった。

だが、あと1歩届かなかった。1点を追う9回2死一、三塁で5打席目が巡ってきた。一打同点、1発が出れば一気に逆転の期待が膨らんだ。だがマクガフの前に一塁ゴロでゲームセット。全力疾走し、悔しさを押し殺した。「勝てなかったので、また明日切り替えて。勝ってタイになるように頑張ります」。歓喜のヤクルトナインを横目に、三塁側ベンチに引き揚げた。

第1戦はノーヒットだったが、第2戦でマルチ安打を放ち、第3戦でホームランとノッてきた。第4戦、王手はかけさせない。プラスに考えれば、この日の敗戦で、オリックス日本一の胴上げは神戸になった。スタジアムの雰囲気を一変させるラオウの一撃で、まずはタイに戻す。【真柴健】