日刊スポーツ東北版で毎週1回、楽天情報をお届けする「週刊イーグルス」。今回は今季限りでヤクルトを現役引退し、楽天2軍打撃コーチに就任した雄平氏(37)のインタビューをお届けします。東北高(宮城)から投手でプロ入り。19年間のプロ野球人生では野手転向やセ・リーグ優勝などを経験。高校時代を過ごした東北の地で指導者の道を歩み始めた。秋季練習での指導を通じて感じたやりがいや、選手への期待、今後始まる仙台での生活などについて聞きました。【取材・構成=相沢孔志】

-秋季練習の2週間を振り返って

他のコーチの方から、いろいろなことを教えてもらいながら毎日過ごしていました。人数は少ないですけど、いろいろな選手を毎日見ていて、コミュニケーションを取ったりとか、少しずつ選手たちの性格なども覚えてきているのですごく楽しかったです。

-2週間の間に日本シリーズが開催された

試合は見ていました。チームの戦力としては当たり前ですけど、なれていないので。もちろん1人のファンとして。チームメートだったので、やっぱり優勝して日本一になってほしいと応援はしていました。

-指導者は夢だったか

指導者になりたいと思っていました。まさかすぐにできるとは考えてもいなかったです。引退して間もなかったですし、呼んでいただかないとできないことですから。こうして高校時代を過ごした仙台で、石井一久GM兼監督(48)はヤクルト時代の先輩でしたし、いろいろなご縁があるところでコーチをやらせていただくことは、すごくうれしく思います。

-やりがいは感じているか

かなり感じています。(選手に)アドバイスをすることも多々ありました。選手から意見やこういうイメージでやっていますとか、こうやりたいですとか、そういうコミュニケーションを少しずつ取ることができたので、すごく来て良かったと思います。来年からではなく、この2週間は勉強になりました。

-印象に残った選手や新たな発見はあったか

印象に残った選手は全員です。今はその選手の特徴や課題にしていることは頭に入っていますし、毎日見ていると癖も分かってきて。そういったことも勉強になりました。

-これまで相手として楽天を見てきた

今年1年はずっと2軍にいたので、2軍の選手をいつも見ていて本当にポテンシャルの高い選手がいるなという印象がありました。実際に入ってみると確かにそうでしたし、これから、そういう選手が1人でも多く1軍で活躍してほしいなと。その中で自分が力になりたいです。

-現役時代に投手と野手を経験。指導に生きるか

これは僕も分からない部分があります。ただ、プロで投手と野手を経験させていただいた。言ってみれば1回、挫折しているということ。いろいろな経験をできたことは、違う視点で役に立つことがあるかもしれないと思います。

-どういった形で選手に指導したいか

選手は1人1人タイプが違います。ですが、選手は長所があってプロに入っているので。その長所を伸ばしつつ、それ以外の課題の部分を地道に補いたい。最終的には1軍で戦力になって活躍して最高の野球人生を過ごしてもらえるように。そういった選手を1人でも育てられるように教えていきたいと思います。

-ドラフトの上位3人は野手。伝えたいことは

1年目の僕もそうですが、選手たちはもっと右も左も分からない状況で入団します。まずは自分を信じて一生懸命、がむしゃらに1年間をけがせずにやり切ってほしいと思います。細かいアドバイスをどうこう言うことではないと思うし、これから選手と話していくことはありますが、その都度いろんなことを分かった中で指導したいです。

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-東北高在学時から仙台の街の雰囲気は変わったか

街の雰囲気は僕の中では変わっていないと思います。(楽天生命パークがある)東口は変わりましたね。ただ、高校時代は寮生だったのでそんなに街に出ていないです。僕がよくランニングをしていたコースにマンションやお店ができたことが一番、衝撃的でした。

-高校時代に監督だった若生正広(わこう・まさひろ)氏から学んだことは

厳しかったですけど、たくさんのことを教えていただきました。人としての基礎であるあいさつや返事、掃除だったりとか。そういうものはずっと口酸っぱく言われていましたし、プロに入っても本当に大事だなと今もずっと思っています。そういうものはこれからも僕自身そうですし、選手にも大切にしてほしいなと思っています。

-高校時代を過ごし、宮城や東北の方々に恩返しという思いは

本当にその思いで東北に来ました。3年間でしたけど、ものすごく濃い3年間でした。僕の中では野球の原点だと思うので、初めてのコーチで(宮城に)帰ってくることができて、恩返ししたいという強い気持ちを持っています。皆さんが喜んでいただけるように、頑張っていきたいなと思います。

-交流戦や映像を通して仙台のファンの印象は

高校に入学した時にプロ野球の楽天イーグルスはありませんでしたが、高校野球で球場が満員になったり、試合を見てくださる方が多かったので、いつか東北に野球チームができたらいいなと高校生の時に思っていました。元々、東北や仙台は温かい人が多いと。高校の先輩や携わってくださった方々がいろんな意味で温かいと思っていたので、そのイメージ通り、ファンの方も温かいという印象があります。

-仙台での生活が始まることで楽しみは

正直、仙台に来られるだけで楽しみなんですけどね(笑い)。なおかつ、そこで野球を教えられる。石井監督やいろんな方との新しい出会いがたくさんあって、楽しみしかないですね。

-コロナ禍が続くが、行きたい観光地はあるか

いっぱいありますね。仙台で言ったら、海に1回行ってみたいです。松島は行ったことはあります。あとは秋保温泉。ただ1人ではいけないですね。家族が来たときに。これから調べて行きたいですね。

-1年間の目標と意気込みは

本来であれば1軍に何人、戦力のある選手を送りたいとか言いたいですけど、始めたばかりなので。選手も全員見ていないので何とも言えないです。1軍で頑張っている選手はキャリアハイで頑張ってもらうことが大事だと思いますが、1年間戦う中で絶対にそれだけでは無理です。1軍も2軍も含めて、総動員でプロ野球はやらなければいけないものだと思います。1軍に呼ばれたときに、今2軍にいる選手が活躍してもらえるように。少しでもチームの戦力になれるように、1人1人としっかり向き合って、なおかつその中でレギュラーを取ってもらえるように、僕も毎日全力で向き合ってサポートしていきたいです。

◆雄平(ゆうへい)1984年(昭59)6月25日生まれ、神奈川県出身。東北で01年センバツ出場。02年ドラフトで2球団から1巡目指名を受け、ヤクルト入団。03年4月22日、巨人戦で初出場。6月11日、巨人戦で初勝利。09年オフに外野手転向。14年は自己最多の23本塁打を放ち、ベストナイン。15年10月2日、阪神戦でリーグ優勝を決めるサヨナラ打。9月29日、現役引退を発表。11月8日、楽天2軍打撃コーチ就任。174センチ、83キロ。左投げ左打ち。