ソフトバンク千賀滉大投手(28)が5日、ペイペイドームで契約交渉に臨み、今季取得した国内フリーエージェント(FA)権を行使せず、2億円増の年俸6億円でサインした。

日本人投手では球団最高額。年俸変動型の5年契約だが、選手側が契約の見直しや破棄ができる「オプトアウト」が付く。順調なら来季中に海外FA権を取得する見込みで、メジャー挑戦を前提とする異例の契約となった。(金額は推定)

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千賀にとって至れり尽くせりの契約になった。国内FA権を行使せず、残留を決断。会見では「国内は今のところはホークスでやっていこうという気持ちはあったので、そういう決断になったんじゃないかな」と晴れやかな表情を浮かべた。

年俸6億円の5年契約にオプトアウトが付く内容は、千賀の長年の夢を尊重するものだ。17年オフからメジャー挑戦を直訴してきたが、球団は今年もポスティングシステムの利用を認めない方針を貫いた。順調なら来年中に海外FA権を取得する見込みで、自らの意思で契約を破棄して挑戦できる。「野球選手、野球人として、常にそういう思いを持ちながら、上を向きながら日々を大切に過ごすことが大事。それがホークスいる中でも力になることは間違いない」。右腕は揺るぎない夢を改めて語った。

一方で、今季は4月の試合で左足首の靱帯(じんたい)を損傷し、長期離脱した。「今年1年間は本当に大きくて、いつ野球選手は大きなケガをするか分からない。どういう風になるかは試合を終わってみないと分からない部分があると思わされた」。1年契約という選択肢もあったが、5年の契約年数に球団の誠意を感じた。

球団としては懸念だった国内他球団への流出を阻止した形だ。三笠取締役GMは「彼がメジャーに挑戦しないと言ったときに、プレーするのはホークスであるというメリットがある。オプトアウト付きだが、選ばなかったときには長くホークスでプレーできるという内容」と説明。何らかの理由で千賀が米挑戦を断念した際に、ソフトバンクで長期間プレーできる道を残した。

今季は8年ぶりのBクラスに終わり、6年連続2桁勝利のエースは来季へ向けて「全部キャリアベスト。今までの数字を全部ぶち抜くくらいの気持ちでいきたいですし、やらなくちゃいけない」と誓った。最高の結果を残し、胸を張って長年の夢をかなえる。【山本大地】

◆千賀滉大(せんが・こうだい)1993年(平5)1月30日生まれ、愛知県出身。蒲郡から10年育成ドラフト4位でソフトバンク入団。12年4月に支配下へ昇格。13年に51試合登板して1軍定着し、16年から6年連続2桁勝利。19年最多奪三振、20年には最多勝、最多奪三振、最優秀防御率の3冠。187センチ、89キロ。右投げ左打ち。

◆オプトアウト 長期契約の途中でも、選手が自ら契約内容を見直すことができる条項。設定した成績を残したり、年数を経過すれば、より高い条件で契約を結び直したり、FAとなり他球団と交渉することもできる。今年6月にジャイアンツ傘下3Aの山口俊が、オプトアウトの権利を行使して退団。巨人に復帰した例がある。