「TOKYO」のプライドを貫き、初の頂点に立った。東京ガス(東京都)が出場22度目にして初優勝。

4点リードの9回にホンダ熊本(大津町)の猛追で1点差とされたが、中盤までの得点が生き、逃げ切った。山口太輔監督(44)は、ここ2年は予選敗退。不退転の決意で臨んだ就任4年目、最高の結果でシーズンを終えた。

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1点差に迫られ、なお2死一、二塁。一打同点を、最後は宮谷が空振り三振で切り抜けた。地響きの中、マウンドにブルーのユニホームが殺到した。山口監督は「耐えて、耐えて、粘って勝てた。ホンダ熊本さんの攻撃に敬意を表したい」と相手にも感謝した。

大敗からの再出発だった。6月1日の日本選手権予選で日立製作所に1-7。屈辱の後、選手たちに訴えた。「俺は日本一になりたい。なりたくない選手は会社に戻してやる」。誰も「やめる」とは言ってこなかった。「あれからですね。チームづくりが加速しました」。各自が弱い部分に向き合い、苦手な練習に取り組むようになった。3年ぶりのドーム切符を東京都第1代表で手にした。監督自らもスタイルを変えた。「情の監督」を自覚するが「非情采配がないと勝てない」。この日、続投を望む先発臼井を7回で代えた。

5試合計27得点。適時打のたびに選手は胸の「TOKYO GAS」や右袖の東京都マークを指さした。準々決勝前、山口監督が「東京の強さを示すために。自分のためじゃなく、誰かのために」と話したのが、きっかけだ。もとは慶大の先輩でもあるENEOS・大久保監督の言葉。勝てない期間、大久保監督やJR東日本・堀井監督(現慶大監督)を訪ね、教えを請うた。そのENEOSに準々決勝で逆転勝ちし、勢いのまま黒獅子旗をつかんだ。

「東京ガス94年の歴史で、たまたま、この場にいるメンバーで初優勝できましたが、OBの皆さん始め受け継いできたものが、やっと94年で達成できました」

情を込め、誇らしげに言った。【古川真弥】

○…抑えと先発で今大会4試合に登板した臼井浩投手(27=中央学院大)が、最優秀選手に贈られる橋戸賞に輝いた。決勝では先発を志願し、安定した制球で7回6安打で1失点。準決勝までは抑えとして3試合に登板し、フル回転した。試合後にはうれし涙を流し「決勝まで他の投手に連れてきてもらったので、決勝は僕が何とか仕事はできたかなと思う。今後も、橋戸賞に恥じない成績を残していきたい」と話した。

▽東京ガス・笹川晃平外野手(打率4割1分7厘で首位打者。決勝ではソロ本塁打)「負けているときも、会社の方たちが応援してくれた。期待に応えられたかなと思います」