日刊スポーツはオリックスの25年ぶりリーグ優勝を記念し、「火曜B」と題したスペシャル企画を1月末までの毎週火曜日にお届けします。第5回は今季から本格的に三塁転向した1年目で、ゴールデングラブ賞に輝いた宗佑磨外野手(25)。愛用グラブの秘密に迫ります。【取材・構成=真柴健】

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こだわりを貫いて、ゴールデングラブ賞をつかんだ。今季本格的に三塁に転向した宗のグラブは、実は“外野手モデル”だった。

「小指と(薬指を一番端の1箇所に)2本入れて、人さし指も出しています。そっちの方がポケット(の部分)が深くなるので、握りやすいんです。サードは(ボールの)握り替えをそんなに速くしなくてもいい。ガッチリと捕ってからで間に合うので」

通常の野手はそれぞれの指をグラブの穴に1本ずつ通すが、一風変わったスタイルで通している。三塁守備で一番重きを置いているのは「つかむ」こと。武器の強肩と、フィット感を重視した結果だった。

14年ドラフト2位での入団時は内野手だった。「ショートのころは普通に5本指(捕球)でした」。18年に外野に転向し、再び三塁へ。今春突然の転向だったため「それ(外野用)を使うしかなかった。緊急用です。でも、全然いける!と」。外野時代に小指と薬指を1カ所の穴に収め、人さし指を出していたスタイルを継続。そもそもグラブは外野用の縦綴じを好み、「外野手用グラブの小さい型で(三塁を)練習していた」こともあって、違和感はなかった。

メジャーばりの反射神経で、ダイナミックな守備をみせる。三遊間の深い位置でも打球をキャッチし、回転スロー。高い守備力で投手陣をもり立て、25年ぶりのリーグ優勝に貢献した。

「技術に関しては、ここ1年で伸びたものじゃない。ここまで段階を踏んで培ってきたものだと思う。だから、まだまだ成長途中だと思っています」

三塁への本格転向は中嶋監督から「やってみないか」と提案された究極プラン。左足のコンディション不良で春季キャンプは不参加で、1軍合流はオープン戦の最終盤。開幕スタメンに飛び込み「全く想像していなかった賞」を獲得するまでに大ブレークした。

「今までの感覚なら、三塁は『打てるサード』のイメージだと思う。守備に意識を置いた『新しいサード像』を作り上げていけたら」。来季はゴールデングラブ賞の証しとして、ローリングス社のグラブのロゴ部分が金色になる。一流の仲間入りを果たした背番号6が、華麗な三塁守備でみせる。

 

◆今季の宗 左足のコンディション不良でキャンプは不参加。オープン戦出場は2試合でほぼぶっつけ本番でシーズンに入った。敵地での開幕西武戦に8番三塁で出場。5月3日の敵地同戦では森脇から、チーム64年ぶりの2年連続ランニングホームランを放ち波に乗った。5月は月間打率3割1分8厘の好成績で三塁の定位置を確保。初めて規定打席に到達し、139試合、131安打、9本塁打、42打点、パ13位の打率2割7分2厘。ロッテとのCSファイナルステージでは第3戦で2ラン。ヤクルトとの日本シリーズでは、全6試合で安打を放った。

◆宗佑磨(むね・ゆうま)1996年(平8)6月7日生まれ、東京都出身。ギニア出身の父を持つ。横浜隼人では高校通算30本塁打。同校から14年ドラフト2位でオリックス入団。4年目の18年に開幕スタメンを勝ち取った。昨季7月25日楽天戦でチーム18年ぶりのランニングホームランを記録。通算成績は352試合、278安打、17本塁打、87打点、打率2割5分2厘。181センチ、83キロ。右投げ左打ち。来季推定年俸は5700万円。