物事への「入り」を大事にするロッテ井口資仁監督(47)らしい行動だった。

10日、ロッテ浦和球場で始まった新人合同自主トレ。ルーキー9人が遊撃に集まってのノックを終えると、すっと動いた。

ドラフト5位の八木彬投手(24=三菱重工West)に声を掛けた。

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「一番前に行け」

同1位の松川虎生捕手(18=市和歌山)から育成4位の村山亮介捕手(18=幕張総合)まで、ドラフト指名順に9人が並んでノックを受けていた。

「プロとして入った以上は1年目だろうが20年目だろうが、ドラフト順位ももう全く関係ないんで。(練習前に)そう言ったつもりなんですけど、どうもドラフト順に受けてるんで」

敵と戦うのは開幕してから。入団会見でもそう告げた。ケガせずキャンプインし、チーム内競争への参戦を-。強く望むだけに、当たり障りのない並び順が物足りなかった。「社会人選手に言うのが一番いいのかなと思って」。9人の真ん中にいた八木を選んだ。

珍しい行動に映った。技術指導はコーチに託し、自身は見守ることが多い。「思いついたから言うのはあまりしないです。選手が悩み倒した後に聞くとか」。一方で練習の入り、試合の入り、打席の入り…勝つための第1歩を重視する。春にはもう、9人は別々の立ち位置になる。ひと声に多くの“行間”を込め、プロでの自立を早々に促した。

「次からやります」

八木からはそう返事があったという。今の評価は横一線でも、個々の動きは首脳陣の記憶に残る。采配の決め手になることもあるかもしれない。指揮官はかつて、昨季盗塁王の節目にこう言った。「和田は自分の力で支配下選手契約を勝ち取りました」。居場所は全精力で勝ち取るもの。戦いは始まった。【金子真仁】