日刊スポーツはオリックスの25年ぶりリーグ優勝を記念し、「火曜B」と題したスペシャル企画を1月末までの毎週火曜日にお届けします。第7回はオリックス吉田正尚外野手(28)と04年アテネ五輪陸上男子ハンマー投げ金メダリストで、スポーツ庁の室伏広治長官(47)との師弟物語です。16年オフから師事し、体作りのノウハウを吸収。運命の出会い、鉄人継承の軌跡に迫りました。【取材・構成=真柴健】

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吉田正は2年連続リーグ制覇に向け、年明けから沖縄で自主トレを行っている。昨年までは阪神糸井、ソフトバンク柳田らと合同で練習してきたが、今回は初の「独立」。チームメートの来田や佐野如、阪神遠藤らとともに、鍛錬を積む。トレーニングのベース部分は「室伏さんのメニュー、プログラムが基本です」と話す。ケガに屈しない体作りのノウハウを若手選手に伝授している。自らの野球人生を支える師匠・室伏広治氏との出会い。そこには知られざる1通の手紙があった。

プロ1年目の16年オフ、吉田正は関係者を通じて室伏氏の連絡先を入手した。思いを込めて、直筆の手紙を送った。「相手にお願いする立場なのでね。電話やメールもいいけど、手紙を書いて伝えようと思って」と6年前を照れながら振り返った。

当時、吉田正は腰痛に苦しんでいた。常に高いパフォーマンスを発揮できる体を求めて、室伏氏にトレーニング指導を懇願。熱の込められた直筆メッセージを機に、「室伏塾」が開講した。「今思うと恥ずかしいですけどね(笑い)。あのとき書いて、本当によかった。大きな出会いでした。だから、金メダルを取れてホッとした」。トレーニングの知識を得て、強い体を作り上げた。18~20年は3年連続全試合出場。昨季9月上旬に左太もも裏を痛めて負傷離脱するまで、512試合で連続試合出場していた。

昨年はリーグ制覇とともに、東京五輪で侍ジャパンの「悲願」にも貢献。12月にはスポーツ庁を表敬訪問。自らのアスリート人生に大きな影響を与えてくれた恩師と同じ色のメダルを首に下げ、金メダル獲得を報告した。「1つの目標にしていたこと。ご指導いただいた先生に、いい報告ができて本当によかったです」。輝くゴールドを手に持ち、白い歯を光らせた。競技は違えど、「鉄人」の継承者として、吉田正の挑戦はまだまだ続く。

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○…スポーツ庁長官の室伏氏は、額に入った日刊スポーツの紙面(21年1月25日付)を長官室に飾っている。コロナ禍でも明るい話題を届けてほしいと、紙面を通じて吉田正にメッセージを送ったもので、かつて一緒にトレーニングを行った際のツーショット写真が掲載されている。