連続写真でフォームを分析する「解体新書」。今回は、TBS系「サンデーモーニング」スポーツコーナーの新・御意見番に就任した日刊スポーツ評論家の上原浩治氏(46)が、オリックス山本由伸投手(23)とロッテ佐々木朗希投手(20)を解説。現役NO・1と将来性NO・1と注目する両右腕の投球フォームを比較しながらひもときました。

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現役NO・1の山本と、将来性NO・1の佐々木朗のピッチングフォームを見比べてみた。山本には人にはまねできないような完成度の高い技術が詰まっているし、佐々木朗にはスケールの大きさを感じさせるダイナミックさがある。投球フォームにはそれぞれ個人差があり、万人に共通する正解はないが、私なりの見解で2人のフォームの特性を解説してみよう。

山本はノーワインドアップ、佐々木朗はセットポジションからのフォームで、足の上げ方も対照的。山本はあまり高く上げないタイプで、佐々木朗はこれ以上は上がらないと感じるほど高く上げている。どうやって投げ始めるかや足の高さはそれぞれで、肝心なのは足を上げたときに、バランスよく立てているか。2人とも<1>~<4>、(1)~(4)までスムーズに動けていて、バランスもいい。

ここからの軸足である右足の使い方に、2人の個性を感じる。山本は<5>~<8>にかけて、右膝を少しだけ外側にひねるよう割って使っている。この時、上半身にはまったくと言っていいほど力みはなく、お尻から自然に投げる方向に向かっている。そして右膝も、同じくまったくと言っていいほど前に突き出るような形で折れていない。理想的な軸足の使い方で、私にはできなかった。

佐々木朗は、(5)から(6)にかけてダイナミックに右膝を割って使っている。(7)では左腕をしっかりと上げ、左肩が開かないように心掛けているのだろう。佐々木朗の(7)と山本の<8>は、どちらも左足のスパイク裏側が捕手方向に向いている。軸足の右足にしっかりと力がたまっていないと、このような形にはならない。

テークバックも特徴的。山本は<8>でセカンドベース方向にボールを持つ手を残すように使ってトップの形(<9>)を作っている。これは右肘が背中側に入らないようにしているからだろう。

その点でいうと、佐々木朗の(8)では、右肘が少し背中側に入り過ぎている。ここまで入ると、右腕の振り遅れの原因になりやすい。右肘に負担がかかりやすく、登板間隔を空けないと投げられない要因になっているのかもしれない。(9)でのトップの形も、やや上半身が突っ込み気味で、右の股関節にたまっていた力がほどけている。一方、山本の<9>では右の股関節がほどけていない。佐々木朗に限らず、すべての投手が手本にしていい形ができている。

トップを作ってから、山本は<10>~<13>でフィニッシュ。この間での下半身の使い方と、上半身の腕を振る軌道は芸術的と言っていい。<11>のリリースする瞬間には、踏み込んだ左足を真っすぐにして、支え棒のように使っている。こうやって左足を使うと、<12>から<13>でお尻が後ろに残ってしまうことがあるが、山本はしっかりと投げる方向に向かってフィニッシュできている。腕の振りも真っすぐに捕手方向に振れている。

リリース後の山本の<12>と佐々木朗の(11)を比べると分かるだろうが、山本は右肩が一塁側に流れていない。これが安定した球筋と制球力を生み出す秘訣(ひけつ)。佐々木朗もダイナミックで悪くはないが、山本の完成度と比べると改善の余地はある。

ただ、佐々木朗はまだ高卒3年目で、改善点があるのは「伸びしろ」があるのと同じ。恵まれた体格だけでなく、手足も長い。この体を使いこなせたときは、とんでもないピッチャーになる予感がある。

山本で気掛かりなのは、昨年の疲労がどこまで抜けているか。11月まで日本シリーズで投げていただけに、蓄積疲労が心配になる。注目の2人の投手がどういう状態で開幕を迎えるか、今から楽しみにしている。(日刊スポーツ評論家)