DeNA南場智子オーナー(59)と三浦大輔監督(48)が、「徹子の部屋」ならぬ「智子の部屋」で語り合った。球場などでコミュニケーションはとってきたが、対談は初めて。「横浜反撃」をスローガンに掲げる今季。互いの人生観や今季への思いを明かしながら、南場オーナーは大手IT企業を切り盛りする“らしい”言葉の数々でエールを送った。【取材・構成=久保賢吾】

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南場オーナー(以下南) 目の前で見ちゃったしね、あれをね。大変、悔しかったですよね。

三浦監督(以下三) 目の前で見て悔しくて、あそこにいかないといけないなと。

21年10月26日ヤクルト戦。本拠地・横浜スタジアムで見つめたあの屈辱の瞬間は、指揮官が決意を固めた瞬間でもあった。

三 あそこにたどり着くために何回もトライする。例えば山の頂上を目指すことが目標だとしたら、東からがダメなら西から。それでもダメなら、視野を変えて遠回りになるけど南から登ってみようかと。

三浦監督の現役時代は172勝184敗。敗戦から何度もはい上がって、25年間の野球人生を歩んだ。

三 失敗しない人間はいないと思います。負けて悔しくて、次は勝ってやろうの繰り返し。最下位という悔しい思いをしたからこそ、今年は「横浜反撃」のスローガンのもと、やり返したいと。

南 いいですね、本当に!あのスローガンはいいですよ!

三 やられたら終わりじゃないです。次、どうするかが大事だと思います。

ともに負けず嫌い。南場オーナーは心をコントロールしながら、チームの戦いを見守っているが…。

南 負けるとめちゃくちゃ、悔しいんですよね。言い聞かせますよ、143試合が大事だと。1試合じゃなくて、シーズン通しての戦いだからって。だから、143試合分の心を持ってないとダメ。でも一喜一憂がまた楽しいんですよ。

三 今日の試合に勝とうとやってますし、何とか勝ちにいくぞというのはあるんですけどね。1戦1戦、そういう気持ちで戦っての繰り返しですね。

南 野球のいいところは次の日に試合があって、勝っても負けても、ゼロクリアにして、また始まるところ。でも日曜日だけはね~。負けたら48時間苦しむから。でも、そんなことを監督に言っちゃうとあれだから、自然体で思うようにやっていただければ。

南場オーナーは、(1)外国人選手の早期来日(2)98年の日本一を知る石井野手総合コーチらOBの復帰(3)今永ら主力投手の復活を挙げ、反撃態勢に自信を示した。その上で、企業のトップらしく、監督の指揮に大きく期待した。

南 1年目であのような結果になって、今年はこういったことは繰り返さないんだと、変えていくんだということは、しっかりおありでしょうから。さっき言った3つよりも、さらに大きなポイントかも。

鋭く切り込んだ、と思わせたところで飛び出す素朴な質問も智子流。

南 キャンプの時って、結構時間の余裕はあるものなんですか?

そして、差し込まれながらも、全力で真面目に答えるのが番長流。

三 今までだと休みの前に外食に行ったりしてましたけど、それができなくて。今はゆっくりお風呂に入ったり、コーヒーを飲んだりしてますね。

南 リラックスする時間がないのかなと思いましたけど、今回は少しある感じなんですね。

三 選手もやる時はとことんやって、休む時はゆっくりしてもらいたいなと思いますね。

「智子の部屋」は硬軟自在。ディー・エヌ・エーを大手IT企業に導く中で大事にしてきたものは、監督業へのヒントになるかもしれない。

南 目指す頂に向かって悩むことです。例えば人間として、愉快じゃないことが起こったとする。そうなった時、その悩みがチームなら優勝、事業なら事業の成功という目指す頂に向かった悩みなのかどうかというと、意外とそうじゃなくて。個人的に不愉快なだけで、目指す頂にはあまり影響ないと思ったら、あまり悩まない。目指す頂を軸にすることが重要ですね。

そして、経験を重ねてたどり着いた境地は、長いペナントレースに身を置く者への気付きにもなる。

南 若い時は物事をものすごく短期的に解決しようとしてたんですよ。焦って、今解決したいと思うことで逆に深みにはまったりしたんですけど、長い視点が必要な時もあるなと。切羽詰まって、ボルテージが上がってる時は、少し時間を置いてみようと。

監督とオーナー。その目は同じ場所を見据える。

南 やっぱりね、(ファンが)お待ちかねのものをお届けしたいです。目標に到達した時のみんなで飲むお酒はおいしいんだけど、そこに至る道のりで一緒に喜んだり、悔しんだり、全部のドラマをご一緒させていただきたいです。

三 そうですね。みんなで優勝を味わう年にしたいです。みんなで一緒に喜びたいですね。

その暁には…。

南 それ、考えとかなきゃねぇ。今度監督と考えるけど、「優勝したら、これをします」よりも、みなさん優勝が楽しみなので。(胴上げで)監督を高く、高く上げてほしいですね。

【編集後記】DeNA南場オーナーが創業者である理由 背中の角度はいつもきれいな90度

◆南場智子(なんば・ともこ)1962年(昭37)4月21日、新潟市生まれ。新潟高から津田塾大を経て86年にマッキンゼー・アンド・カンパニー入社。88年から米ハーバード大経営大学院に留学。96年マッキンゼー・アンド・カンパニーの役員就任。99年に株式会社ディー・エヌ・エーを設立し、現在は代表取締役会長。15年から横浜DeNAベイスターズのオーナーに就任し20年シーズンは女性では初のオーナー会議議長を務めた。21年に女性初の経団連副会長に就いた。

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